(排球)

彼の両親は、すごくいい名前をつけたもんだと、上から目線で申し訳ないけど心底思った。
優しく生きると書いてゆうき。見ただけでも2つの意味をもつその名前の中にはきっとたくさんの願いと愛情も込められているはずだ。

「優生」
「…?はい?」

首を傾げるも自分の名前を呼ばれたのだと理解した芝山が返事をしながらこちらを見上げてくる。まるで小さな子供みたいな、綺麗な黒い瞳がぱちぱち見え隠れした。

「ゆーき」
「はい!」

もう一度、今度はちょっと伸ばしながら呼べば嬉しそうに頷きながら大きな返事。元気があってよろしい。
自分よりも低い位置にある自分と同じ色のはずなのに重たさを感じさせない、艶のある黒髪に手を伸ばして軽く触れる。ふにゃり、なんて聞こえてきそうな笑顔が浮かんだ。

「いい名前だな、優生」
「そう、ですかね…?ありがとうございます」
「うん」

いきなり名前を誉められて芝山はきょとんとしながら、首を傾げながらも返事を返した。そういうところ。これが研磨や夜久ならあからさまに嫌な顔をするだろうなと考える。まあ、実際俺もいきなり名前を誉められたら反応に困るけど。それでもきちんとお礼を忘れない。

「優しく生きるって書いてゆうき。ゆうきは勇ましい気って意味も込めてあんの?」
「あ、はい。一応、そうらしいです。なんか、生まれたとき未熟児…ってこともなかったんですけど、結構軽かったみたいで。お父さんもお母さんも小柄なほうなので、小さくても何事にも恐れずに色んなことをやっていけるように〜みたいな……」
「そうかそうか」
「僕の名前がどうかしましたか?」
「いーや。芝山らしくていい名前だなーって思っただけ」
「ありがとうございますっ」

さっきとは違い、照れたような芝山はほんのりと頬を赤くさせてにこりとわらった。

「キャプテンの名前も、かっこよくて良い名前ですよね!」

褒められたから誉め返す。お世辞みたいといえばそうかもしれないけれど、多分芝山はそういうことは考えてない。純粋にそう思ってる。自分としては別にありきたり、言うならちょっと古いような名前な気もするけどこう言われたらなんだかちょっとつまるものがある。

「どーも」

素直で、純粋な奴に言われるからそこ、恥ずかしさ。それを隠すようにがしがしと、いつも幼馴染みにするのと同じように頭を撫でた。
やめてください、なんて言いながらも楽しそうに笑う芝山の頭をもっと撫で回しす。

「なんか、キャプテンに名前を呼ばれると恥ずかしいですけど、すごく嬉しいです!」
「そうかそうか。ならいっぱい呼んでやろう!」

ゆうき、優生とまるで犬撫でるように芝山の頭を撫で回し、頬をぐりぐりすれば先程より一層楽しそうな声を出して、何やってんだと俺が夜久に蹴られるまでそれは続いた。
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