(排球)

ひんやりとした甘さが口一杯に広がって熱くなった身体が少しだけ冷えた気がしたのに。額に浮かぶ汗はそのまま、むしろさっきよりも増えた気がしてタオルで拭った。

「あっつ……」

じりじりと茹だるような暑さにもう一口溶け初めたアイスを頬張る。

「ダメだこれ、死ぬわ」

溶けてなくなるわーと横にいた花巻が呟く。それに返事を返すこともせずにぽたぽたと垂れ初めたアイスを食べ進めた。
返事がなかったことが気に入らなかったのか、いつの間にか花巻が近付いていて残り少ないアイスをぱくり、食べられてしまった。

「あ」
「おー冷たいうまい」
「お前自分のあるだろ」

無くなってしまった、ただの棒を元々入っていた袋に突っ込む。勝手に食べられていつもなら怒るところだが、生憎そんな気力は既にない。ほぼ溶けてたし、甘かったからいいかとゴミをコンビニ横のごみ箱へと突っ込んだ。

「シュークリーム買ったんだけど、ちょっと気持ち悪くて」
「なんでこの暑さでシュークリームだよ…」

この蒸し暑さの中でそんなもの食っていたら気持ち悪くなるなんて言わずもがなだろう。だって好きなんだもん、と茶目っ気に頬を膨らませる花巻。いくら好きでもこんな外で食べるべきではない。アホ、と一言言いながら鞄からペットボトルを差し出す。タオルに包まれたそれはまだ少し氷の残るスポーツドリンクだ。

「わーい、何?岩泉ドリンク凍らせてんの?」
「母ちゃんがな」

普段部活で飲むのと比べて毎回味が違うのは母ちゃんが作っているからで、帰りに少しでも涼しくということで持たされている。まあ、普段の部活終わりの帰りじゃほぼ溶けて温くなっているだけだけど。

「へぇー、岩泉の母ちゃん優しいー」
「本当、おばちゃんは岩ちゃんと違って優しいよー」

からかうような花巻に続いて声を挟んできた及川が松川と一緒にコンビニから出て来た。

「うっせぇクソ川。まだ中いたのかよ」
「コイツ本当決めるの遅いの。なんなの、女子なの?」
「仕方ないじゃん!食べたいのいっぱいあったんだから!」
「女子か」
「こんな女子きもい」
「きもくないし女子じゃないよ!」

騒ぐ及川にはいはいと適当にあしらいながら携帯を取り出す。時刻の確認で取り出したそれはメールを知らせるランプが光っていた。ちなみに13時過ぎ。開いたメールは母ちゃんからで、「お昼ご飯用意してあるから皆で帰ってきてね」と最後にもう少し歳を考えろとばかりの絵文字がついている。
というか、皆でってなんだ。まるで今誰とどこにいるか分かっているみたいな、そんな内容に眉間に皺が寄る。目の前でミルク味のアイスキャンディにかぶり付く及川を見れば何が面白いのかにやにやと笑っていて気持ち悪いったらありゃしねえ。

「……クソ及川」
「ふっふーん」
「チッ」
「舌打ちやめてよ!」
「花巻と松川これから暇か?」

無視もやめてよ!とまた騒ぐ及川は当然無視して2人を見れば暇と答えたのでうちへ来ないかと誘った。

「岩泉ん家?」
「なんか母ちゃんが飯作ってるんだと」
「マジで?行くいく」
「いいの?」
「いいよ!おばちゃんも皆来たら嬉しいって言ってたし」
「なんでテメェが答えんだよ」

勝手に答える及川の頭を叩く。そもそもなに人ん家の母ちゃんと仲良くメールしてんだふざけんな。すると手に持っていた携帯が震えてもう一件、新しいメールが届いた。

「…おばちゃんも来るってさ」
「は?!ちょっとなんで岩ちゃんのほうにお母ちゃんのメールくるの!」
「知らねぇよ」
「あ!しかも絵文字!息子には疑問文ですらはてなマークつけないくせに!」
「いいからお前はさっさと残りのアイス食えよ!」

そして早くゴミも捨ててこいと背中を押して追いやる。花巻がさっき渡したペットボトルを返してきながら手元のメールを覗いて来たので特に隠す必要もないので見やすいように動かせば同じように松川も覗き込んで来た。

「及川だけでなく及川家とも仲良しか」
「及川と仲良くしてるつもりは全くこれっぽっちもねぇけどな。つかもう行こうぜ。ここ暑いわ」
「だな」
「あ、なんか買ってったほうがいい?」

飲み物とか、とコンビニを指差す松川にいいと首を振る。つうか出来たやつだな松川。でもうちにそういうのは特にいらないので気にするなと歩き始めればじゃあいっかと松川と花巻が後ろからついてくる。

「ちょっと!及川さん置いてかないでよ!」
「お前は道わかんだろ、つかほぼ帰り道だろ」
「そうだけど!家隣だし!でもだからって置いていくことないでしょ!」

あーうるせぇ、と3人耳に手を当て塞げばまたぎゃあぎゃあと騒ぎ出す。

「もー及川うるさい」
「暑いんだから静かにしろよなー」
「うるさいのと暑いの関係ないよ!」
「あるデショ」
「あるよ」
「あるわ」
「仲良しかお前ら!」

どん、と俺の後ろを歩いていた花巻を巻き込んでこちらに突っ込んできた及川。暑いつってんのに引っ付くな…!とここ数日何度言ったことか。さらりと躱していた松川は暑そうーなんて言っている。てかもう、さっさと家帰って飯食いたい。
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