夏美ママ視点



「ママー、きょうはパパは?」
「パパはお仕事に行ったわよ」


朝、一緒にお見送りしたでしょう?と脚元から見上げてくる宙斗に言えばきょとんとした顔で頷いた。


「じゃあおひるにかえってくるの?」
「ううん、今日は夕方まで帰って来ないわよ」
「うーん?」
「うーん?」


首を傾げながらこちらを見上げる宙斗と同じように首を傾げてみる。大体いつもは1つ言えば納得してくれて、下手をしたらパパより頭の回転の速い子なのに今回はどうも納得できないらしい。濡れていた手を拭いて、目を合わせるように腰を屈め、しゃがんだ。その時に、一つ向こうの和室にいる流司を見れば朝から遊び疲れて眠っていた。宙斗はあれ、と別のドア、玄関のほうへ繋がる方を指さした。


「あら」
「パパ、おべんとうおいていったから、かえってくる?」


ちょっぴり嬉しそうなそんな声が聞こえてくる。
宙斗は指差した、玄関にある棚の上にあるお弁当包みと水筒。確かにいつもお弁当を持って行くときには帰りは夕方になる。それがあるということはお昼に帰ってくると思ったのだろう。よく見ていてとても偉いと思うし、褒めるべきなのだろう。


「パパ、お弁当持って行くの忘れちゃったみたい」
「わすれちゃった……じゃあパパかえってこないの…?」
「お仕事忙しいからねえ」


一応、昼休みはあるわけだし時間があれば取りに帰ってきそうだけれど何一つ連絡がないということはきっと忘れたことすら気づいていないだろう。時計を見れば時刻は11時少し前。


「それじゃあパパ…おなかすいてげんきでない…」


時間がなければ近くのコンビニで何かを買うこともできるでしょうけど、宙斗はまだそこまでは分からない。
お腹を空かせたパパを想像してか、少し元気のなくなった宙斗を見てどうにかしてあげたいと思うのはきっと母としては当然のことだと思う。

みんなで持って行く、としても寝ている流司を起こすもの気が引けてしまう。だからと言って宙斗と流司を2人置いて行くのも…。お留守番はまだちょっと早い気もするし…。


「あ!」
「あ!ママ、いいことおもいついた?」


私の真似をして、あ、とちょっと体を揺らした宙斗。我が息子ながら可愛いと思い頭を撫でれば嬉しそうに笑った。


「宙斗が持って行けばいいんじゃないかなあ、ってママ思うの」
「ぼく?」


きょとん、と首を傾げた宙斗に、笑って頷いた。





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