(青えく)
手を伸ばせばいつもいた貴方。いつも躓いてしまう私に手を差し出して立たせてくれた貴方。私よりも大きな手で、いつも私を助けてくれた。初めて会ったとき、貴方と握手をしたとき。初めてだったの。初めて、男の子と、友達と握手したの。暖かかった。私よりも少し体温が高くて、まるで眠たいときに手が熱くなる子供みたいに暖かくて、その手が私は好きだった。大好きだった。
「燐、今どこにいるの…」
声に出した言葉は雨の音に消えた。まるで私の心を表すかのように降る雨。傘もささずに外へと出たら直ぐに髪も服もぐしょ濡れになった。顔を上げれば黒く澱んだ空が目の前にあって、このまま涙と一緒にこの悲しみも流してくれればいいのに。
「燐…燐、燐…っ」
もう立てないよ。一人じゃ、立てないの。貴方がいなきゃ、貴方が手を伸ばしてくれなきゃ。嫌なの。転けた私を立たせてくれるのは貴方だけなの。ほら、いつもみたく"またか、"て笑いながら手を伸ばしてよ。私はいつも貴方に手を伸ばしているのに。
伸ばした手は空を切り