(てにす)
本日の天気、晴天。
「なあなあ、えくすたしぃってなんなん?」
今日もウチの部の可愛い後輩は元気に答えにくい疑問をぶつけて来た。
「……は?」
清々しいくらい(もう嫌になるくらい)元気で、ほんまかわええ金ちゃんに目を向けると新しいことを知れる楽しみからか目をキラキラさせながら此方を見ている。
可愛い。あかん、ほんまかわええ。
「謙也ー?」
「え?あ、あぁ、意味な。意味…」
さて、どうしたものか…
金ちゃんの言う"えくすたしぃ"とやらは、うちの変態部長の口癖である"エクスタシー"のことやろう。(ていうかそれしかないわ)
「クラスの奴らに聞いても誰も答えてくれんのんや」
そりゃ、金ちゃんに変なこと教えてテニス部の奴らにボコられるくらい、百も承知の奴らがわざわざ教えるわけないやろ…
「で!どーいう意味なん?」
「あー…っ、えっとー……」
どないしよう。意味は一応わかる。(何年あいつと友達やと思うてんねん。初っ端、意味分からんくて聞いたわどアホ!)
わくわくうきうき、なんて効果音がつきそうなほど楽しそうな表情で見上げてくる金ちゃん。「…堪忍なぁ、金ちゃん。俺バカやからその"えくすたしぃ"の意味分からんのんや」
「えー…」
「堪忍なぁ…」
頬を膨らませた金ちゃんのさらさらした髪を撫でるとそのまま抱きつかれた。
「謙也のばーか」
「せやなー」
「しゃーないからワイが調べて教えてたるわ!」
「ほんまか?頼んだで金ちゃん」
ニッと笑ってVサインを向けてきた金ちゃんの頭を撫でて俺も笑ってみせた。
「ほな、白石に聞いてくるな!」
「……へ?」
「えくすたしぃ言うとる白石に聞けば早いんよな!行ってくるわ!」
手を上げて、いつの間にか俺より数メートル先に立つ金ちゃんに手を伸ばすとそのまま手を振りながら走り去って行った。
「ちょ、金ちゃんっ?!あかん!白石だけはあかっ…!」
行き場を無くした手をゆっくり下ろす。
とりあえず、ユウジと光を連れて白石の元へ行けば金ちゃんの純粋は守られるはず…。