(ばかてす*七巻ネタ注意)




明久がムッツリーニを可愛いと言ったとき、何だか少しムカッとした。どうしてなのかわからない内に、明久の頭を軽く叩いていた。


そんなわけの分からないことがあってから数時間、体育祭も終わり皆が帰った教室で儂は一人席に座りため息をついた。


「はぁ……」


頭を抱えるように机へうつ伏せになると仄かに卓袱台から木の匂いが香った。
ガラリと開かれた教室のドアへ目を向けると今まで儂を悩ませた本人――明久がいた。


「あれ秀吉?まだ帰ってなかったの?」
「え?…あ、あぁ」


教室の中へ入って来た明久から目を逸らす。
なんだろ、今明久を見ると凄くイライラする。


「秀吉?どうかしたの…――ってえっ?な、なにっ?!どうしたの秀吉!?」


イライラして、どうしようもない気持ちになって溢れそうな涙を頑張って堪えていたのにできなくて儂の顔を覗き込んだ明久がいきなり焦りだした。


「…っ」
「え、えっ?!ちょ、どこか痛いの!?怪我したの?!」
「な、なんでも…ないっ…」

言葉がつっかえて上手く伝わりにくい。涙を止めようにも止まらなく、明久は困ったように頭を掻いた。

小さくため息が聞こえた後、何か暖かいものに包まれた。


「あ…き…」
「ど、どうすればいいかわかんないから…その…秀吉が落ち着くまで…」


ぎゅっと強く抱きしめられ、明久へ近づく。
ドクンドクンと明久の心臓の音が聞こえ、普通よりも早い気がするのは気のせいじゃないはずだ。










「もう大丈夫?」
「うむ、もう大丈夫じゃ。迷惑かけたの」


そう明久に言い、擦ったせいで少しひりひりする目の回りを軽く触る。


「怪我とか本当にしてない?」
「大丈夫じゃ」


いまいち納得のいっていない明久に笑ってみせ、鞄を手に取る。


「やっぱ秀吉は笑ったほうが可愛いよ」


そう言って笑いながら儂の頭を撫でる明久。


「……」


いつもなら可愛いと言われて嬉しくないとか言い返すけど、今日は逆に何だか嬉しくて恥ずかしくなった。


「明久」
「ん?なに?」
「ご飯食べに行かぬか?」
「え゛…秀吉と2人っきりとか物凄く嬉しいんだけど今日お金ないんだ…」
「今日は儂の奢りじゃ。迷惑かけたからの」
「い、いいよ!秀吉に奢らすなんて男として…」
「儂もお主も両方男じゃ!ほれ行くぞ!」


明久の背中を押し、一緒に教室を出る。


「わわっ…!ちょ、……」



あの気持ちがなんなのかはよく分からんが、今は明久と一緒におれば幸せじゃ。


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