騒がしい教室に目立つ緑色が増える。これ本当に地毛なのか?と思うくらい真緑で、学校指定のジャージを着るとにんじんに変身する。本当ににんじんカラーなのである。私はそんな彼、緑間真太郎に挨拶をした。しかし今日はやけに不機嫌だ。
「緑間君おはよう、元気ないね?」
「おはよう、実はだ「名前ちゃんおっはよ!」高尾貴様被せるな!」
緑間君の1つ後ろの席である高尾君はいつも通りに元気で挨拶をしてくれるが、案の定被せてきた。いつもの事なのでまあ触れずにそっとしておく。触らぬ神に祟りなしだ。
高尾君と少し話をしていれば、物凄い音と共に倒れる緑間君。大丈夫か?とクラス中が心配する。
それもそのはず、190センチもある彼がらしくもなく物に足を取られて派手に転んだのだ。気が気じゃないだろう。
なぜこうなってしまったのか理由を知っているであろう高尾君はこれでもか、というほど笑っている。やめてくれ緑間君を怒らせないでくれ面倒だから、頼むよ!とでも言いたげなクラスメイトを横目にし、問題ないと巨人が立ち上がり笑っている相方に文句を言う。よかった大丈夫そうだ。
それにしてもあの緑間真太郎がこんなドジをするのか?と些か疑問だった私は怒られのを覚悟で聞いた。鼓動がおかしいくらい早くなり、手に力が入る。なんでこんなに緊張するかなんて私にもわからない。そして高尾和也はニンマリとした笑顔で「真ちゃんおは朝最下位なんだよ!今日誕生日なのにさ」と口にした。これは一大事である。
「ねえ緑間君ラッキーアイテムはなんだった?」
「緑のシュシュなのだよ。生憎妹も持ち合わせていなくて、」
緑のシュシュ?確かにシュシュは無縁そうだが、緑は馴染み深いというかそんなに草を生やしてどうするんだ?と言いたいのを飲み込み、確か友達に貰ったシュシュが緑色だったことを思い出す。
おもむろに鞄を漁り、出てきたシュシュに緑間君が飛びつく。危ない危ない、面白すぎて笑うところだった…
「名字!これを今日1日貸してほしいのだよ!!」
「え、いいけど」
「これでもう安心じゃん?よかったね、真ちゃん」
「あと、今日誕生日なんだって?おめでとうUnlucky Boy」
「……ありがとう」
アンラッキー、という言葉が気に入らない様だが満更でもない表情をしている。割と顔に出やすいタイプなのでそれはそっとしておこう。
よかったね真ちゃん、と至ってまともに喋った高尾君に驚きつつも、緑間君の表情が柔らかくなったのを私は見逃さなかった。
「それで、ラッキーアイテムは手に入ったんだから何かいい事あるんでしょ?」
「あ、それ俺も気になる!」
「それは、」
「「それは?」」
「……猫にリモコンを踏まれそこだけ聞けなかったのだよ」
「「はあ!?」」
残念そうにグッと拳を作り、可愛い愛猫に怒れなかったと悔やんでいる姿はほとほと可笑しい。冷徹だなんだと言われている彼でも、猫には勝てないし怒れないなんて誰が想像するのだろうか。
「蟹座のラッキーアイテムは緑のシュシュ!気になるあの子とグッと距離が縮まるかも!?」
20140812
20170408 修正
20180717 修正
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