「名前、好き嫌いは駄目よくねぇ」

「煩いなぁ…大我には関係ないでしょ」

この会話から始まった大喧嘩、内容は小学生レベルのもので、私は嫌いなにんじんをお皿の恥っこに寄せていて、見かねた大我が注意して私が突っかる。ここで受け入れればいいものの、嫌なものは嫌なのだ仕方ない。
我ながら子供だとは思うものの、どうにも素直になれなく、しょうもない意地を張るばかりだった。
終いには「大我なんか大嫌い!」と勢いに任せて走り、家を飛び出す。人間勢いが大事な時もあるが、今のは使い道を間違っていることなんて重々承知だ。





持ってるものは携帯とお金だけ、しかも家を飛び出してきたから帰れない。こんな滑稽な事があるだろうか?たかがにんじん、されどにんじんなんだわかってほしい。
途方に暮れた私は少し遠い公園まで歩き、年季の入ったブランコに腰掛ける。壊れる寸前のような末恐ろしい音を立てて前後に揺れる様は、さながらB級のホラー映画だ。子供ならちびる。

「どんなに細かくしてもにんじんはわかるって言ったんだけどな……」

大方好き嫌いをなくそうと入れたんだろう、とぶっきらぼうな彼なりの優しさに後々気付くがもう手遅れで、探してくれる確率の方が低いだろう。面倒な女で本当に申し訳ないな、と思いながらも直す気は更々ない。

不意に後ろから誰かの靴音が聴こえ、勢いよくそちらに振り返る。音は公園の入り口で止まり、暫くしたら園内に入ってきた。暗闇でもよく目立つツートンカラーの髪。どうやって染めたのかわからないその髪が身体の動きに合わせて揺れる。遠目からでもわかる逞しさは羨ましい限りだ。

私には気付いていないのか、ターンをして行こうとするが何を思ったか立ち止まる。バッと音が付きそうなほどの勢いで今度は私の方を向いた。
大股で歩き、早足で近付いてくる姿はそんなには怒っていないように見える。謝るチャンスは今しかないようだ。

「ごめん、」

「いい。気にしてねーから」

「…ホント?」

「嘘ついてどうすんだよ……」

「それもそうだね。」

「名前帰るぞ?」

前を行く大我の服の袖を摘んで私も歩いた。今は手は繋がない。後で沢山繋ぐから、今はいい。
耳を赤くしている大我を横目にして、たまにはらしくもない甘え方もしてみるものだ、と頭に残して袖を離し、今度は手を繋いだ。





20140813

20180718 修正
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