照りつく太陽に砂浜と走る高校生。無縁だと思っていた青春が目の前に広がる。これもこの部に誘ってくれたフリ君のおかげだ。
しかしいくら青春の証だと言われても焼けたくないので日焼け止めはしっかり塗った。
「カントク、ドリンクとタオル用意出来ました」
「お、名前ちゃんありがと〜休憩!!」
「大我君さっきの大丈夫だった?目とか口に砂入ってない?」
「あぁ、大丈夫だぜありがとな」
ダンクをしようとしたけれど見事砂に足をとられてしまい、顔面から落ちた大我君は日向先輩にツッコミまれ、悔しそうに顔を歪めた。これだけで折れる彼ではないので心配はいらなそうだ。
そして明日は大我君の誕生日。合宿中に誕生日がくるので、プレゼントは持ってきた。なにをあげたら喜ぶだろうか、と1ヶ月から考えていたけれど、好物のチーズバーガーとか練習着とかタオルとかしか思い浮かばなかった。
流石にチーズバーガーはないと早々に選択肢から外し、練習着も微妙だと思い無難にタオルにすることにした。
なんとか決まったのはいいのだけれど、無地のタオルでは素っ気ないと思い、端のほうに小さく彼の名前を刺繍した。
器用貧乏な私にしては割といい出来栄えなので喜んでもらえるといいな、という期待を持って今日に至る。
カントクがニッと笑い、練習再開夕方からは体育館で練習よ、なんて言ってブーイングをくらっている。確かに鬼畜かもしれないけれど、強くなるためだからどうか頑張って欲しい。
(地獄の)合宿1日目は無事に終わり、それぞれ湯に浸かったり、卓球をしたり、枕投げをしたり消灯まで自由に行動している。どこもお祭り状態で騒がしい。
「まだ少し早いけど渡そう、かな」
フラッと外に出た大我君の後を追って砂浜に足を向けた。蒸し暑く、手で仰ぐが生暖かい風ばかりかかり余計暑くなる。
「名前出てこいよ居るんだろ?」
「気付いてるなら声かけてくれればいいのに」
石でできている短い階段に2人で腰掛けて海を眺める。沈黙を破ったのは私で、シンプルにおめでとうの言葉と持ってきたプレゼントを渡す。
「サンキュ、開けてもいいか?」
「うん。気に入ってくれるかは分からないけど…」
珍しく丁寧に包装紙をとってタオルを広げた。私に視線を向け、とても嬉しそう笑ってあれやこれやと話してくれる。
「俺の名前縫ったのか?」
「どう?上手に出来てるでしょ?」
「ああ、すっげえ嬉しい」
そう言って彼は優しく私を抱きしめて何やら満足気である。潮の香りと彼の匂いが混ざり不思議な感じがした。
そっと離れ、手怪我してねぇ?と大きな手が小さな私の手をゆっくりと撫でて傷を探す。平気だと笑ってみせれば大我君も笑った。
20140818
20170408 修正
20170716 修正
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