5月中旬

降谷さん寝てください。風見がそう言って僕を仮眠室へ押し込んだ。横になってしまえば重くなる瞼、ゆっくり意識がフェードアウトする。
ハッとして起きたのがざっと一時間後、部屋から出た僕と丁度いいタイミングで鉢合った風見は少し薬臭い。

「名字の所に行ったのか?」

「ええ、」

「容態は?まあその表情は相変わらずってとこだな」

「折れた骨はともかく、外傷は殆ど治ってきていますが…」

「頭を強く打ち付けたらしいしな。後遺症もないとは言えない」

「そう、ですね」

「それに、いつ目が覚めてくれるかわからない。下手をしたらずうっとこのままなのかもしれない」

僕は風見と別れ病院へ向かう。通い慣れてしまった道によく花を見繕ってもらう花屋、公園で遊ぶ子供たち、時間や季節は巡るのに彼女の時間は止まったまま動かない。あの事件から半月は経つが目覚めることはなく、機械音だけがいつものように響くだけだった。

 
(2|13)



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