▼ 憂鬱
チャイムが一回、二回三回四回……煩い。こんなにしつこくチャイムを鳴らすのは絶対に降谷だ。私の友人ですら三回だ三回。無視を決め込むが諦めず何度も音が鳴る。
「なんですか?煩いんですけど静かにしてもらえませんかね?」
「……ごめん」
「それは何に対してですか?チャイムを連打して電気代をかさませたことに対する謝罪ですか?それとも家に女を連れ込んだことに対する謝罪ですか?どちらにせよ私にはもう必要ないので帰っていただいて結構です」
「…………」
「黙るんですね?なんでそこで黙るんですか?……それより謝るくらいなら初めからしないでもらえますか?」
「はい」
「で、その女とは相性はよかったんですか?」
「え、」
「あの時随分とお楽しみ中でしたので。まあそんなことは置いておいて、貴方はこれからどうしたいんですか?」
「…やり直せるとは思ってない。でも僕には君しかいない」
「よくわかっていらっしゃるようでなによりです。貴方には私だけだが、私には他にも相手はいます。別に貴方でなくてもいいのです。……暫く距離を置くのはどうでしょうか?」
「君がそういうのなら」
「ではそうしましょう」
降谷にはとりあえず帰ってもらい、まっさらになってしまった明日のことを考える。明日はデートに行く約束をしていたのにもう踏んだり蹴ったりだ。
彼が似合うと言ってくれたロングワンピースが目に留まり気分が下がる。ため息をひとつついてその日はふて寝した。
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