懇切


頭に拳銃目の前には黒い人達。おいおい勘弁してくれまだ私は死にたくないぞ!?普通なら耳を塞ぐ程の声を出しているのに私の周りの人間はピクリとも反応しない。なぜだ?
そしてその中の銀髪の男が一言「てめぇ化粧落とさなかったな……」

「うわあまじかよ!!」

よかった夢だ。化粧を落とすのを忘れたぐらいで銃なんか突きつけられたらたまったもんじゃない。あの銀髪の男も許さない。絶対にだ。
心做しか鞄の位置が少しズレている気がする。多分腕なんかが当たって移動したんだろうきっとそうだ。階段をかけ登る音と、申し訳程度のノックでドアが勢いよく開いた。

「なにかありました!?」

「いえ、なにも。強いて言うなら悪夢をみました」

「それはさぞ恐ろしいものだったようですね」

「そんなに大きく聞こえました?」

「ええ、珈琲を零してしまいそうな程」

「……すみません」

「いえ、お気になさらず。あ、そうだメイク落とし買ってきたので使ってください」

手渡されたメイク落としはなかなかいい値段のもので、女慣れしてるのか?と思わせる。お風呂湧いてますからと沖矢さんはリビングにいると残して行ってしまった。急いできたのにメイク落としバッチリ持ってきたのか…そうか……。と零してえげつないであろう自分の顔を鏡で見る。これは酷い縄文人も吃驚な程だ。よくこんな汚い顔を見て平気だな…としみじみ思いながら化粧を落とす。


  
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