温情
い組に女の子がいるって皆騒いでたから、どんな子かと思ったら大人しそうで忍術とは無縁そうな感じだった。
そんな彼女が、少し深く傷をつけてしまったので簡単でいいので手当してほしい、と医務室に尋ねてきた。
「君はい組の……」
「名字名前」
「名前ちゃんね、僕善法寺伊作よろしくね」
「よろしく」
傷に薬を塗ると少し顔を歪ませてたけど、終わると元の無愛想な顔に戻る。
包帯を巻くとすぐに行ってしまいそうだから、質問を投げかけてみた。
「名前ちゃんはどうして忍術学園に?」
「……厄介払い」
「ええ?厄介なの?」
「わかんないけど、私が邪魔なんだよ」
「そっか……でも僕はそうは思わないから仲良くして欲しいな」
「仲良く?私は女だけど?」
「女の子とか関係なく。僕と名前ちゃんは今日から友達!いいでしょ?」
「いいでしょって……そう言ってくれるならそうする」
照れくさそうにそっぽを向くが、これは普通立場というか配役が逆な気がする。
「今度僕の友達を紹介するね!」
「え、いいよしなくて」
「まあまあそんなこと言わないで。名前ちゃん強いから勝負したいって言ってたんだ〜」
「勝負?物好きな人だね」
「食満留三郎っていうんだけど、勝負が好きな奴なんだ」
名前ちゃんは静かに笑って了承してくれた。留三郎に早く報告したいと思っていると誰かが足を止めた。
「それじゃあ僕これから用事があるから行くね」
「私もおいとまする。伊作、ありがとう」
立ち上がって医務室を後にしたが、廊下には誰もいなかった。
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