傍観


「女のくせしてここにいるなよ!!くのいち教室はあっちだぜ?」

まだ幼かった俺は学年の異質であった名字名前がそう言われるのを黙って見ていた。名前はああ言われると決まって無視をしてどこかに行ってしまう。
何故彼女がここにいるのか、なぜ何も言わないのか疑問が多くて堪らなかった。

状況は悪化し、名前に手を挙げる奴がでてきた。「女のくせに」と言ったら「その女に手も足もでないじゃない」と返されカッとして名前に掴みかかったそうだ。
掴みかかられた名前はじっとして、やり返すことはしなかったと仙蔵から聞いた。
それから名前に嫌がらせをする奴らがたくさん出てきたが、俺はただ傍観した。

医務室の前を通った時に、名前の話す声が聞こえた。足を止めると、は組の伊作の声も聞こえる。
二人は楽しそうに話した後、その場を立ったので俺は急いで医務室を後にした。

それから暫く、名前は伊作と留三郎と一緒にいる事が多くなった。い組のくせしては組と一緒にいるのが当たり前のようになっている名前に不満を持つものがちらほら出てきて、口々に「女のくせして」と言った。
俺もあまり人の事は言えないが、その時ばかりは腹が立ったので口を開こうとすると、仙蔵がほっとけと言ったのはよく覚えている。

名前は伊作と留三郎と一緒にいるとよく笑っていた。その笑った顔が俺には衝撃的だった。組では笑わず、無愛想である名前があんなに楽しそうに、嬉しそうに笑うのに大きな壁を感じた。





「文次郎?次実技授業だから行かないと遅刻するよ。仙蔵はもう行っちゃったし……」

「あ、ああすぐ行く」

名字名前は綺麗な女になった。容姿は申し分なく、線も細い。十五なのに家に呼び戻されないのはきっとあの人のせいなのだろう。
遠くから早くしろ、という名前にわかってると返して走った。





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