今日はスフィンチ・フェスタだ。まぁわざわざいわなくても分かっていると思うけれど。
私は今こそがチャンスだと思っているんだ。なんのチャンスって、子どもたちとの触れ合いに決まってるじゃないか。
いつもは遠く見ているだけの子供たちと言葉を交わしお菓子を配る。
……おい、そんな目で私を見るな。アンタも、あのインチキなカジノディーラーの言葉を信じているのか?
ふぅ、まぁいい。だが……、はりきって材料を買ってきたは良いが、まさかこんな量になるとはな。
いや、作ってしまえば大した量じゃないだろう。よし、ではさっそく始めようか。
それで、何からすればいいんだ? ……私が料理をしたころがあるわけないだろう。
私の仕事は料理人ではない、小説家だ。こういったことは初挑戦さ。だから君がここにいる。
作り方がわからなくても感謝とアモーレだけは有り余っているから……、まぁなんとかなるだろう。
見てくれ。何とかなったじゃないか……! まさか初めて作ってこんなにうまくできるとは思わなかったな。
もしや私には料理の才能があるのかもしれない。なぜ今まで気付かなかったんだ……!
なんだ疑っているのか? 私見だが、本当に素晴らしい出来栄えだぞ?
ではひとつ食べてみると良い。私が書いた小説の結末のように感動すること間違いなしだ。
このお菓子と、このミモザの花を一緒に渡したら、きっと子どもたちもとびっきりの笑顔を見せてくれるだろう。
……どうしたんだアンタは、さっきから黙り込んで。まだあらぬ誤解をしているんじゃないだろうな。
なに? 本当においしかったからびっくりした? はぁ、本当に、ねぇ。アンタはもう少し考えて物を言ったらどうだ。
それじゃあ私の作るものが美味しいわけがないと決めてかかっていたように聞こえるぞ。
美味しいのは当たり前だ。子どもたちよりも先に、感謝を伝えたいと思っているアンタと一緒に作ったんだから。
……本当に鈍い人だな。アンタに1番に食べて欲しくてスフィンチ作りに誘ったと言えばわかってくれるか?
さぁ、次は子どもたちの笑顔を集めにいこう。もちろん、アンタの笑顔も一緒にだからな。
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