大鎌を持った黒装束の少年は、人差し指を俺に向けて言った。


「アンタ死にやした」


……いやいや何を言ってるんだ、この子は。ちょっと落ち着こう。確か、そうだ。帰宅中に轢かれそうだった子供を助けた、ことは覚えている。それでドーンって音がして、気を失って。目が覚めたら背景真っ白な世界にいて。この子が変なアイマスクして眠っていて。此処が何処なのか、尋ねるために起こして。


「え?」
「だから言いやしたでしょ、死んだんでさァ」


地面に座り込んだ俺に目線を合わせるように、そいつはしゃがんで笑みを浮かべた。綺麗で吸い込まれそうな瞳。整った顔立ち。男である自分から見ても、少年は美しかった。可愛いのなら女の子が良かったのに、残念だ。まあ問題はそこじゃないけれど。


「それでですねィ、俺ァ迎えに来たんです」
「迎えって、まさか」
「あの世」


きっぱりと言い放った彼は、恐ろしい程に冷静で。
嫌な予感がしたけど、やっぱりかよ!ちょ、俺はまだやりたいことがあるのに!パフェとか餡蜜とか、プリンとかケーキとか団子とか、まだ食べ尽くしていないのに!こんなことなら死ぬつもりで食っておくんだった!死んじまったけどさ!


「おおお、俺は天国と地獄どっちに逝くんだ!?」
「はいはい落ち着いて下せェ、それは神様が決めるんでね」
「神様ァ!?」


こんなやる気のなさそうな死神の上司だ。どうせロクでもない奴だろう。冗談じゃない、あっさり人生を終わらせてやるものか。


「あ、言い忘れてた」
「なっ…、何だよ!?」
「アンタは保留組だから、そこんとこよろしく」


思わず目が点になる。何だその保留組とやらは、と尋ねると、その死神は説明するのが面倒だと寝転がってしまった。しかしこちらは人生が懸かっているのだ。必死になって起こせば、重そうな瞼を開けて説明してくれた。


「つまりはですねィ、いろいろと分類がありやして。罪を犯した人間、自ら命を絶った人間、病気にかかった人間、そしてアンタみたいに不慮の事故で死んじまった人間。そいつ等が今までどのくらい良いことをしたのか、それによって処遇が変わってくるんでさァ。アンタの場合、行いが良かったみたいですねィ。保留組ってーのは、しばらくあの世で働いてもらって、善良な人間だって判断されたら、生き返られる奴等のことです」


頭がなかなか働かないが、つまり俺は、生き返ることができるのか。またあのデザートと暮らす日々が戻ってくるのか。よっしゃ、だったら何でもやってやる。とことん生にしがみついてやる。


「んじゃとりあえず」
「ぐはっ!」


急に立ち上がったと思えば、死神は俺に首輪をつけて空中へと引っ張った。何これ何これ。首が絞まっているんですけど。息が出来ないんですけど。てか死んだはずなのに、また死にそうなんですけど。


「あの世へ連行ォー」


ああ、本当に生き返られるのかな。


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あの世に行ってからは、神様の近藤さんと会ったり。
たまに沖田は銀さんの様子を見に行ったりして仲良くなったり。

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