斎藤さんから半ば強引に押し付けられたH-01は、バニーちゃんは無理だということで俺の家で預かることになった。どうやらバニーはH-01の姿形が俺に似ているのでダメだそうだ。確かにドッペルゲンガーに会った気分ではあるものの不快ではない。以前は敵として俺達と戦い、追い詰められたこともあった。しかしそれはそれ、これはこれだ。憎むべき相手ではない。


「しっかし驚いたわー」
「…何がだ」


無表情のままH-01は首を傾げた。驚く理由が分からないのは無理もない。何せ彼はありとあらゆることを平然とやってのけるのだから。些細なことから時には専門的な知識を持ちえないと出来ないことまで。表情一つ変えずに行う姿は、容姿が同じもあって目を見張る。


「何でもねーよ」


愛想のない返事をし、虎徹は唇を尖らせた。その時、ふと、H-01の格好を思い出す。姿勢良くソファに座る彼にどうしたのだという目を向けられたが、それよりも優先すべきことが虎徹にはあった。クローゼットから出したコートを羽織り、愛用の帽子を被る。季節は冬だが果たして機械にも寒いと感じることがあるのか。疑問に思うももう一着コートを選び、H-01に手渡した。


「それでいいよな?」
「…構わないが、何処か行くのか?」
「今日はバニーが来るだろ、買い物に行く。お前の服も買いたいからな」
「衣服にこだわる必要はないが」
「いいから!買うの!」


半ば強引に連れ出して彼を車に乗せる。予定をすっかり忘れていた。時間に余裕はあるものの、食材の調達以外にも買いたいものがいくつかあった。一つが、H-01の私物である。現在彼は虎徹の服を身に着けている。けれど彼自身に着たい服を着てほしい。気に入ったものを持っていてほしい。何でもあげることは出来ないけど。まるで、楓に接しているようだと虎徹は思った。


「どうだ、気に入ったものはあるか?」
「特にない」
「…あっそー、じゃあ俺に似合うの選んでくれない?」
「了解した」


こだわりがないと言うのなら姿形は同じなのだ、自分に似合う服をH-01に着せればいい。サイズも一緒なのだから、同じ服を着回せばちょうどいいだろう。服や小物を選ぶ姿を見つめながら、虎徹は一人の人間としてではなく、父親としての顔を浮かべていた。


***


「…っ、……っ!」
「どうよバニーちゃん、似合う?」
「どうして二人でお揃いの服を着てるんですか!!!」


夕方になり虎徹の家を訪れたバーナビーは、虎徹とH-01の姿を同時に視界に収め、そしてその瞬間叫び声をあげた。虎徹は全体を緑で統一し、H-01は全体を黒で統一した、色違いの部屋着。恋人であるはずのバーナビーが困惑するのも無理はない。お揃いのものを持ってはいるが、未だ服を揃えたことはなかった。なのに、僕よりも先に、この機会人形は。口には出さずともバーナビーが怒り震えているのは虎徹でも気付いた。


「脈拍に異常がある」
「…だ、だだだ誰のせいだと思って…!」
「落ち着けってバニー!な、今度お揃いの買おうな、だから…」


だからと言って所詮二番煎じじゃないですか。冷え切った瞳で告げられた虎徹は、夕食を作る前にお仕置きをされる破目になる。もちろんH-01はその一部始終を全て脳内のHDに焼き付けているとも知らず。


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斎藤さんから預かったH-01と一緒に住む話というリクエストでしたが、いかがでしょうか?感情がない虎徹を見ているようでもやもやするバニーとのことですが、あまりバニーの心理描写を書けていないような気がしますね…。もしかしたら修正をするかもしれません…!この度はリクエストありがとうございました!

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