※いつも通りに〜の続き


万事屋と仲が良いのは前々からだった。だからこそ交友関係もあるし、夜中に遊ぶのも辻褄が合う。けれど違和感が拭い切れなかった。以前は感じなかったはずなのに、決定的な何かがあった。以前からそうだったのかもしれない。今更ながらに気付いて、そうだっけ、こうだっけ、と思っているだけなのかもしれない。近藤さんにも尋ねた。彼もおかしいと答えた。山崎を呼び付けて極秘に調査を始めた。武州の頃からの付き合いなのだ。秘密を隠蔽することに関して、沖田総悟という人物は飛び抜けて上手い。何事もなく図星でも表情にはまず出さない。出してはならぬことなら尚更だ。問い詰めればいいだろうが、あいつは白を切ると分かっていた。万事屋には気を付けろとだけ言い、山崎には総悟の尾行をさせた。疑わぬよう密偵の仕事と合わせて。


「やはり旦那は危険ですね、夜になると気配すら掴めません」
「…そうか」


何をこそこそやっているんだ、とお互い様だが苛立ちを抑えられず煙草を吸った。
そんな時だ。幕府の重鎮共の警護をすることになったのは。上が言うには総悟一人を傍に置き、他は会合場所の周囲を警備しろとのことだ。もちろん反対した。近藤さんと一緒に松平公の元へ向かい、理由まで問い詰めた。けれど知らぬの一点張りだ。総悟は総悟で特に何も言わず了承した。剣に自信があるとしても、万が一のことがある。斬り込み隊長としての腕はあるが、何故一人なのか。ここ数か月のことと関係があるのか。


「俺はやれば出来る子ですぜィ、今更心配たァどういう風の吹き回しですかね」
「心配させたくないなら隠し事せずに全部話せ。何を隠してるんだ」
「…どうしてそれをアンタ等に話さにゃならんのでさァ」


誰にでも一つや二つ知られたくない話もあるでしょう。現にあんたも近藤さんも隠し事をしている。どうして俺だけ話す必要がありますか。飄々とした態度を崩さず総悟はすらすらと言葉を紡いだ。一切、目を合わせようとはせずに。しかし一理ある故、反論することは出来なかった。全てを曝け出す必要などない。昔から共に歩んできても、踏み入るべきではない領域がある。総悟が立ち去ったあともその場を動けずにいた。


「情けねぇ顔だなオイ」
「…!何しに来やがったんだ、テメェ…」


パトカーのボンネットに腰掛けていた万事屋こと坂田銀時は、相変わらずやる気のない目で空を見上げていた。黒ずんだ景色は天人が江戸に襲来して以降、変わることはない。宇宙船が飛ぶ空を忌々しげに睨み付けて、奴は懐から一つの書類を取り出した。分厚いそれを近藤さんに向けて放り投げ、会合をしているタワーへ歩き出す。


「おっ、おい待て万事屋!何処へ行く気だ!」
「あ?幕府の文鎮がいる所だけど?」
「重鎮!文鎮じゃないから!」


近藤さんが真選組の局長として万事屋を引き留めている最中、俺は咄嗟に手渡された書類に目を通していた。見れば会合に参加している面々の個人情報が書かれていて、さらには裏で攘夷浪士と取引をしていた事実までが証拠と共にまとめられていた。


「…こりゃ、どういうことだ…?」


動揺を隠せないまま近藤さんと言い争っている万事屋に視線を向けると、その真っ直ぐな瞳と目が合った。


「俺ァ黙って見ていることなんて出来ない性質でな、総悟君にゃ悪ぃが助けさせてもらうわ」
「やっぱりお前、総悟が隠していたこと知っているんだな!?」
「あぁ、知ってる」


淡々と述べられた言葉に瞬時に怒りが湧き、隊士達もいる目の前で万事屋の胸倉を掴みあげた。分かっている。これはただの八つ当たりだと。自分が知らない総悟を奴が知っているから嫉妬しているのだと。けれど抑えられなかった。どうして俺に、近藤さんに、話してくれなかったのだ。


「知っていること全て話せ」
「そりゃ構わねぇが…、あいつはさ、お前らのことが大事なんだよ。巻き込みたくねぇんだよ。俺に当たるのはいいが、総悟君には当たらないでやんな」
「そのぐらい俺だって分かってる」


小さく笑みを漏らした万事屋は何処か安堵している表情だった。そうして話を待つ俺らにもう一度、赦してやれよと言う。たとえどれほどの事実が待ち受けていようとも、それだけは決してないと知っていながら。許さないわけがない。ただ、一発だけ殴ることは覚悟してもらいたいが。


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真選組と銀さんで総悟を救出するという話。総悟はもちろん接待中。会合だから大人数だね。助け出した時には悲惨なことになっているだろうし、事態が落ち着いてもトラウマが消えないかもしれないけど、悪友三人が救ってくれるよ。

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