しんしんと、雪が降り積もる。一つ一つが真っ白なのに、人間のように色があって、ただただそれを眺めていた。幸いなことに手足の感覚はない。体も動かない。結晶で覆われた地面は冷たかった。仰向けに寝転がっている自分の上に、白が落ちてくる。いずれ全てが埋まり、誰にも見えなくなるだろう。土に還るのだ。土の中にいるものに受け入れられるかは分からないが。 「いいのか、それで」 「いいんでさァ、これで」 鮮やかな紅色の傘を差して立っている人物に、顔は向けずも微笑んだ。出来れば戦場であの人を守って人生を終えたかった。出来ればあの人のためにするべきことをして散りたかった。中心の熱が冷めていく。赤が滲んで雪を汚してしまう。対照的に自身は雪と溶け合うのに。 「旦那」 「…何だ」 「頼みがありやす」 「ちゃんと金は貰うぜ?」 「ええ、好きなだけどうぞ」 足音がすぐ傍まで迫るのを確認して、目玉だけを動かす。あんたの方が消えてしまいそうな色だと思いながら。 「遺言状あるんです」 「…それを渡してくれと?どっちに?」 「…どちらにも、…見つからないようにね、とある場所に隠してるので」 そうして万事屋の旦那に口頭で場所を伝えた。あとはどうとでもなる。朽ちても心は共にあると、あの人に、あの人達に直接言いたかった。いずれ全てが消えてしまう。意識さえも一つの雪と同じ、地面に落ちて消え去る。けれど恐怖はなかった。落ちる先は温かいのだと、知っていたから。 - - - - - 死へと近付きつつある沖田と、通りすがりの銀さん。死ぬ死ぬ詐欺かもしれない話。 |