※金さんに居場所を奪われたまま、たまと定春に会えず、高杉に拾われた銀さんの話


障子の隙間から見えたのは広大な宇宙だった。坂田銀時がいない世界となった地球は見えない。何処までこの宇宙船はやって来たのだろう。近くにあった鏡に映る自分は酷いものだ。死んだような目、は元からだが、頬は痩せこけ、髪もボサボサになっている。自嘲気味に笑って寝転がる。あれだけ共に過ごした仲間は誰一人覚えていない。今、死のうが生きようが、誰も気にせず時は過ぎるのだ。


「…起きたのか銀時」
「……腹、空いた。飯くれよ飯」
「おいおい襤褸切れになったお前を拾ったのは誰だ?御主人様だぜ、俺は」
「そういうプレイが好みならいくらでも呼んでやるよゴシュジンサマ」


馬鹿にするように笑うと高杉も喉を鳴らした。次に高杉晋助と会った時、殺すつもりだったのに。昔の頃と同じ、冗談を言って笑い合っている。居場所が消えたから、坂田銀時がいなくなったから。じゃあ俺は、誰なんだろう。


「俺は誰なのか、って顔しているな」
「………」
「お前は坂田銀時だろう」
「そんな奴ァ、もういねぇよ」


一人として覚えていないのなら、それは死んだも同然だ。瞳を閉じれば思い出す。自分がいなくとも幸せな笑顔を浮かべていた仲間達。鮮明に焼き付いて消えることはないだろう。と、突然、強引に腕が引っ張られた。目を開けると高杉の胸にすっぽりと収まっている自分の姿があった。


「じゃあ俺が創る、いや、生み出してやるよ」
「…何、を…?」
「新しい坂田銀時を」


包帯が巻かれていない右目が怪しく光り輝いた。目を合わせてはいけないのに、目を逸らすことが出来ない。飲み込まれる。飲み込まれまいとしていた、狂気に引き摺られていく。けれど囁かれる言葉はどろりと染み込んで。もう離れることが叶わないと、消える理性の中で思った。

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