不幸なことにエアコンが壊れてしまった上条は、一方通行が居候している黄泉川のマンションを訪れていた。手土産に若干溶けたアイスと、学生には付き物である夏休みの宿題を持って。今現在、涼しいリビングで上条はテーブルに座り、課題と向き合っていた。打ち止めは何個目かのアイスを食べながらテレビ番組を見ている。時折うぉーとかはわーとか奇声を上げながら。


「子供はいいなぁ」
「余所見してンじゃねェぞコラ」
「だってよぉ、補習常連の俺にこんな難しいのキツいですって…」


上条が解いているのは普通科目である数学だ。学園都市第一位の頭脳を持つ一方通行にとってそれは簡単な問題なのだが、大半の学生は頭を悩ませる程度の難易度である。もちろん上条も例外ではない。


「一方通行先生ー、ここ合ってますか?」
「指示された計算方法はちィと違うが、答えは合ってンな。まァいいだろ」


計算過程を書かずにすぐさま解答を出す頭脳を羨ましく思いながら、上条はシャープペンを動かす。終わる気配がない課題に今日何度目かの溜め息を吐いた。そんな彼をじっと一方通行は見つめ、なァ、と声を掛ける。


「宿題が終わったら、一日三食、食べさせてやろォか」
「ほ、本当ですか!?えっ、もしかして一方通行の手作り!?」
「ンなわけねェだろォが!外食に決まってンだろ」
「ですよね…」


がっくりと項垂れる上条だが、そこで突然打ち止めが会話に混ざってきた。


「でもあなたの手作り料理って高級レストランに引けをとらない味だよ、ってミサカはミサカは芳川の言葉を思い出してみる」
「え…?…一方通行、料理するの?…本当に?」
「バッ、何を言ってやがるクソガキィ!」
「痛痛痛ぁっ!」


打ち止めにチョップを食らわせる一方通行の顔は、いつもと異なり真っ赤に染まっている。それを見た上条は椅子から立ち上がり、打ち止めとぎゃあぎゃあ騒ぐ彼を後ろから抱き締めた。


「ひ、三下ァ!?」
「一方通行、俺さ、お前の手料理を食べたいな」
「……っでもそんなおいしくねェ、し、…大したモン作れない…」
「お前が作ったものなら、どんなものでもおいしいよ。なぁ、だめか?」
「だめじゃねェが、…オマエが言うなら、うン…作る」


その後、上条は脳をフル活用して宿題を一日で終わらせ、一方通行と彼の手料理を美味しく頂きましたとさ。

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