とある晴れた日の昼下がり、黄泉川の住むマンションにて。番外個体と打ち止めはテレビゲームを途中で放り出したまま、ソファに座る三人を凝視していた。一人は彼女達がよく知る少年。二人は見たことがない少女。番外個体も打ち止めも、もちろん来訪者に興味があるのだろう。交友関係が狭い彼女達にとって、関わりのある人間は限られている。けれど今回に関しては、理由が異なっていた。興味があるといっても、それは好意的な興味ではない。敵と認識しての興味、だ。


「だから第一位から超離れてください」
「絹旗ちゃんこそ離れろよ。私の第一位から」
「第一位がいつ何処で超クソ野郎のものになったンですか。ふざけるのも大概にしてください」
「ふざけてンのはアンタだろ絹旗ちゃーン。第一位と大して関わりもねェくせに何、何様のつもりィ?」
「…言っておきますけど喧嘩なら買いませンよ。クソッたれの相手とか超面倒臭いンで」
「背伸びしたクソガキに端から喧嘩売るわけないじゃン。自意識過剰なンじゃねェのォ?」


第一位と呼ばれている少年、一方通行を間に挟む形で、黒夜海鳥と絹旗最愛は彼にべったりとくっついていた。互いに睨み合いながら、それでも彼から離れようとしない。口だけがただ暴力を吐き出していた。


「………オイ」
「何ですか第一位」
「何だよ第一位」
「オマエ等、俺を挟んで口喧嘩すンじゃねェ。やるなら別の所でやれ」
「えェー」
「えェー」
「大体どォして俺に引っ付いてンだ。さっさと離れろそして帰れ」


一方通行としてはソファで寝転がることも、のんびりコーヒーを飲むことも出来ないまま、かれこれ一時間以上経っている。以前と比べれば丸くなった彼だが、流石に限界だった。二人を窓から外に放り投げたい衝動が込み上げてくるが、それをぐっと飲み込み、どうにか理性を保とうとする。


「だってお兄ちゃん…」
「誰がお兄ちゃンだァぶち殺されてェのか」
「超似たようなものじゃないですか」
「似てねェよ」
「第一位の性格の悪さなんて黒夜と超そっくりですよ」
「おいそれはオマエもだろ性格悪ィの。つかァ黒夜は人の腕締め付けンな痛ェ」
「ひっはは。絹旗ちゃンは死にたいらしいねェ?弱っちいくせに口だけは達者なよォで」
「チカラ振り回すだけの超馬鹿に言われたくはないですね」
「人の話聞けや血液逆流させンぞ」
「すみませーん」
「すみませェン」
「………」
「冗談です第一位すみませんだから電極のスイッチ入れないでください」
「やめろよ殺人ヨクナイごめんなさいだから待て待て入れんなって」


理由は定かではないが、黒夜も絹旗も一方通行を気に入っている。彼自身もそれには気づいているようで、だからこそ下手に暴力を振るわなかった。自分の演算パターンを埋め込まれたことで彼女達の精神に影響を及ぼしていることに多少の負い目を感じている面もあるようだ。けれど面白くない思いをしている者が二人。番外個体と打ち止めだ。一方通行に特別な感情を抱く二人にとっては、彼を独占する黒夜と絹旗に嫉妬の感情を抱いていた。もちろんそれに彼が気付くはずもなく、やがて黄泉川が帰って来て、しばらく居候することになったり、少女達の間で争いが起こったりするのはまた別の話。


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一方通行と黒夜と絹旗ってとてもいい組み合わせじゃないですかね。兄妹みたいで可愛いと思います。

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