「だからあの人は何処に行ったの!ってミサカはミサカは番外個体の胸を押し潰してみたり!」
「にゃははは無駄無駄ぁー。押し潰しても差は埋まらないよん」
「ムキーッ!ってミサカはミサカは憤慨してみる!」


ポカポカと打ち止めに背中を叩かれながら、番外個体は呑気にゲームを楽しんでいた。一方通行が何処に行ったのか、打ち止めはネットワークを介してある程度の場所は掴める。けれど探しに行こうにも番外個体に邪魔をされ、黄泉川のマンションに留まる破目になっていた。


「いい加減に一方通行のこと、教えてくれてもいいじゃん?」
「愛穂の言うとおりよ、番外個体。それに打ち止めが可哀想だわ」
「ミサカは上位個体のイラついている顔を見る方が楽しいから言わなーい」


にやにやと笑いながらそう言った番外個体を見て、打ち止めは更に怒り出し、地団太を踏んだ。すぐさま黄泉川と芳川が宥めるも、怒りが頂点に達している少女は既に涙目になっている。と、ちょうどゲームオーバーになってしまったようだ。一旦区切りをつけようと、番外個体はソファに腰を下ろしてジュースを飲む。窓の外に目を向けると、何も変わらぬ平穏が広がっていた。打ち止め達はまだ騒いでいる。数日でその光景にも慣れた彼女だが、やはり胸には何かが引っ掛かっていた。


「聞きたいんだけどさ、」


いつの間にか真剣な表情をしている番外個体に、彼女達は動きを止めた。


「ミサカも第一位もアンタ達が思っているよりずっと闇に浸っている。どんなにお気楽な世界に引っ張り上げようとしても、闇にいた人間は、闇に戻るしかない。ミサカ達は誰かの道具として、壊すためだけに存在している。今だってそう。結局、第一位はまた元いた世界に連れ戻されようとしている。それなのに、どうして一緒にいるの?」


淡々と述べる番外個体は自分が今、どんな表情をしているのか分からなかった。けれど自分達、特に第一位は、誰かの見えない首輪がついている。敷かれたレールの上を知らず知らず歩いている。それを彼女達が分かっていないのなら、分からせる必要がある。所詮、血生臭い場所にしか居場所はないのだと。


「……前にも一方通行に言ったけど、何処にいようが関係ないじゃん」
「何それ?じゃあ殺人者でも、平気で一緒にいられるんだ?とんだ警備員だね」
「人を殺すのは罪だ、償うべきことじゃんよ。でもどれだけの罪があっても、あいつがどんな人間か私は知っている。もちろん番外個体ことも。だから闇に堕ちたなら、何度でもその世界から引き上げてやるじゃん」
「ミサカはあの人がどんな人かは知り尽くしてるから、何があっても何処にいても何をしてても信じてるってミサカはミサカは断言してみたり!」
「あらあら二人共、熱く語っちゃって」


芳川は何も語らずとも二人と同じ気持ちなのだろう。番外個体は驚きに目を見開き、しばらく呆然としていた。そんな綺麗事、口だけでは何とでも言える。しかし黄泉川のマンションを初めて訪れた際。ロシアから帰って来た一方通行が久しぶりに黄泉川達と再会した時。彼を本気で殴った黄泉川の顔が、第三次製造計画で作られた自分を見た芳川の顔が、脳裏に焼きついている。自分の存在意義は一方通行を殺すこと。それだけのために作られたのに、誰かの悪意によって生み出された存在なのに。


「馬っ鹿じゃないの」


一方通行の気持ちが理解出来なくもなかった。この手だけは振り解きたくない、と。

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