それはこちらの都合など気にもせず、突然やって来る。
またか、と黒羽快斗はソファに仰向けになりながら、溜め息を吐いた。テーブルを挟んで反対側のソファに座る彼、工藤新一は携帯電話を片手に真剣な表情で会話内容をメモしている。休日だと言うのにどうして首を突っ込みたがるのかねえ。読み終わった雑誌を置いて、こちらの視線に気付かない恋人にまた心中で溜め息を吐く。
高校生探偵の彼にはよく電話がかかってくる。警視庁からの捜査依頼はもちろん、大事に出来ない事件解決の相談など様々だ。まあ新聞によく載るほど有名だし、腕は確かだからしょうがない。女に関しては彼狙いで来る場合もあるが、恋愛にとことん疎い新一はまるで気付いていない。こちらとしては有難いことであるけど。


「……新一」
「ん、なんだ?」
「今日も事件の依頼?」
「ああ、目暮警部から殺人事件のことで知恵を貸してほしいってさ」


事件内容を書いたであろうメモを見ながら、新一の瞳には嬉々として輝いていた。本当に推理馬鹿だ、と快斗は頭を抱えた。同居するようになって早一年。舞い込んでくる依頼を嫌がりもせず、どんな時間帯でも受けるその姿は拍手喝采ものだ。しかしその好奇心のせいで死に掛けたことを、彼は忘れているらしい。隣のお嬢さんにあれほど注意されたのに。


「じゃあ留守番頼むな」
「あー、ちょい待って」
「ん?」


すぐさま着替えて現場に向かおうとする新一の腕を掴み、自分の方へ引き寄せる。そして警戒していない唇に、そっと口付けた。途端、思いっきり突き飛ばされる。


「痛ったーい」
「なっ、何すんだバーロ!」
「何って、いってきますのキス」
「ふざけんなバ快斗!帰ったら覚えてろ!」


耳たぶまで真っ赤にして新一はそのまま家を飛び出していった。床に座り込んだまま、俺は開きっぱなしの扉を閉める。だってしょうがないだろ。恋人よりも事件を選ぶ、新一が悪いんだから。

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