寝不足ながらも登校した俺は、いきなり魔女の説教を食らうことになった。忠告されたにも関わらず、光の魔人に追い詰められた白き罪人。大々的に新聞で報道された"怪盗キッドの犯行失敗"。中森警部としては万々歳の結果だ。まあ今回は白馬同様、誰かが介入していたようだが。そんなこんなで世間的には失敗とされた、怪盗キッドの犯行。目的を果たせたから、どんな報道をされようと構わないが、魔女もとい紅子は不服だったらしい。ホームルームを放り出して屋上で一時間程度、愚痴に付き合わされた。


「それで"光の魔人"の正体、知っているの?」
「知らねぇよ」
「貴方を追い詰めた人間よ!?これからの脅威になるかもしれないのに…」


目の前で大きく溜め息を吐き、紅子は懐から一枚の写真を取り出した。無言で渡されたそれには、自分とそっくりの男が映っている。帝丹高校の制服を着ているそいつは、何処かで見たことがある顔だった。


「工藤新一」
「え?」
「それが"光の魔人"の正体よ」
「……どっかで聞いた名前だな」
「怪盗キッド同様有名だからじゃないかしら?彼は高校生探偵として、新聞によく載るもの」


そういえば新聞に載っていたっけ、と今更ながらに思い出す。いつも特定の記事(怪盗キッドの功績と宝石関連)しか読んでいないから、興味のないものは流し読みだったのだ。


「"平成のルパン"怪盗キッドと対を成す、"平成のホームズ"が彼」
「へぇ、じゃあ中森警部に助言していた奴はこいつか」
「そのとおり」


髪型を変えるだけで相手に成り済ませそうな人物が、自分とまるで逆の立場にある。何だかひどく運命的なものを感じるが、どうせなら女の子が良かった。顔が似ているのは勘弁だけど。


「……工藤新一、ね」


ただの気紛れだと思うが、また遭うことになるのだろうか。中森警部や白馬のようにしつこく追われるのは嫌だが、たまにはスリルを楽しむのもいいと思う自分がいる。
――けれどその後"光の魔人"は現れず。高校生探偵として新聞に載ることもなくなった。一部では死亡説が流れるほど、ぱったりと途絶えた消息。しかし後に知ることになる。ジョーカーは最高の切り札。ギリギリまで使わずに相手を油断させ、土壇場で姿を見せるのだと。

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