お前はいつからお前だったの。と答えが分からない質問に首を傾げた。俺は俺。それ以外の何者でもないのに。時折、担任は不可解な話をする。彼に限ったことではない。クラスメイトもだ。転校初日に知り合いと勘違いをされたのだが、以降は妙な言動や行動が目立つ。訳が分からなかった。まるで鍵を隠し持っている彼等に気付かず、自分だけが必死に失くしたそれを探しているような。いつも彼等は誰かに重ねている。己を通して、過去にいた誰かを見ている。腹立たしかった。悔しかった。今の自分を否定されたような気がして。何があれば完成するのだろう。何があれば未完成ではないのだろう。


「俺は最初から沖田総悟だよ、先生」
「……、そうだな、悪ィ」


いつもいつも苛々するけれど相手は教師だ。殺意を含んだ言葉を寸前で飲み込み、目を細める。また、殺したい衝動に駆られた。先生と出会ってからは特に酷い。何故なのかこの男が、この男らしからぬ行動をしていると、頭の片隅で話す自分がいるのだ。意識して押え込まなければ出てしまう。


「ところで先生」
「おー、何だ」


けれど今は押さえられなかった、我慢の限界だった。


「俺の息の根を止めるのはアンタか土方さんだと決めていたんでさァ」


驚きに目を見開いた男に、だから今度は殺してくれるんでしょうね、と耳元で囁いた。


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僕の声が届く前に〜の逆設定。前世の沖田総悟は病死か戦死か、とにかく望まぬ形で生涯を終えました。現世の沖田が記憶を取り戻すたびに前世の沖田が心を蝕んで苦しめます。実際には沖田の中にいた獣が、前世の沖田という形を持っただけ。昔も今もどちらも沖田総悟に変わりはない。

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