たまに、沖田総悟の顔が分からなくなる。普段は悪戯好きのドSなクソガキだ。主に標的となるのは土方だが、自分も巻き込まれて迷惑したことがある。いつもふらりと現れて何もせずに去って行って。まるで猫のように掴めない野郎なのだ。今日も放課後の職員室にやって来ては、窓際の机に腰掛けて外を眺めている。というかそれ、校長の机なんだけど。


「先生ェ腹減った」
「…食堂でなんか買ってこい」
「何も持ってないのかよ万年金欠が」
「お前ぶっ殺されたいの」


仕方ないので引き出しに常備している飴を放り投げた。いちごミルク味の飴だ。お気に入りでいつも切らさないように買い溜めをしている。受け取った沖田は小さく笑って飴を口に入れた。


「いちごミルク好きですねィ。糖尿病になりやすぜ」
「寸前なの知って言ってるだろコラ」
「さァてね」


そう言って机から降りた沖田は窓縁に腰掛けた。何をやっているんだコイツは。職員室にベランダはない。間違えれば地面に真っ逆さまだ。突拍子もないことをするのは常だが、あまりにも度が過ぎている。


「…お前」
「ねぇ旦那、俺のことどう思ってる?」


船場言葉で呼ばれたことなどなかったのに、すとんと自然に言葉が胸に落ちた。まるで以前からの呼び方がそうであると言うかのように。一瞬、沖田の姿が変わる。制服でも私服でもない、見慣れない服を着た姿。けれど知っていた。むしろそうあるべきだった。夕日に照らされた沖田は表情を歪める。それは初めて見たはずなのに、もっと前に見たような。


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前世が原作設定で記憶を持っている沖田と覚えていない銀さん。

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