「問題です」


にこにこと胡散臭い笑みを浮かべて教室に戻ってきた神威は、その手に三本のラムネを持っていた。誰もいない教室に残って喋っていた高杉と沖田は嫌な予感がしたが、逃げようにも彼から逃げることが出来ないのは知っていたので、予感が的中しないように祈っていたのだが。


「三本のラムネのうち一本はシェイクされています」
「(やっぱりだよやっぱり当たっちまったァ)」
「(さっさと帰れば良かったな…)」


顔を青ざめる二人に気付いているのか気付いていないのか、神威は机の上にラムネを置く。高杉も沖田も、このあとの展開は読めていた。


「さぁさ一本、選んでくれヨ」
「(やっぱりかィ)」
「(やっぱりだ)」


ここで逃げようものなら窓から放り投げられることは目に見えている。流石に瀕死の重傷を負うのは避けられない。ぐっと息を呑んで、彼らは受け入れる覚悟を決めた。一体、何を考えているのだろう。神威はたまに嫌がらせ紛いのことを仕掛けてくる。犠牲になるのは主に二人、そして銀時と阿伏兎だ。神威を嫌いではないし、友達だとは思っている。しかしそれとこれとは別である。今日は誰かが炭酸まみれになって帰る羽目になるのだろう。


「ほらほら、選んで」
「俺はこれにしまさァ」
「……俺はこれにする」
「余ったのが俺ね」


じゃあ一斉の、という神威の言葉を合図に、三人が同時にラムネを開ける。ブシャーッと炭酸を浴びたのは。


「………」
「ま、仕方あるめぇ」
「残念だったね、総悟」


頭のてっぺんからつま先までラムネがかかった総悟は、ぽたぽたと髪から滴り落ちる液体を鬱陶しそうにしながら神威を睨んだ。喧嘩を売るつもりはないが、理不尽だ。あまりにも理不尽だ。先程まで高杉と放課後を楽しんでいたのに。


「(可愛い顔して怒ってるなぁ)」
「(……エロい)」


高杉と神威がそれぞれ思っている中、沖田は神威に気付かれずどう嫌がらせをするか、必死に考えていた。


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