『殺せば良いだろう、お前達の仲間を』


器の首元に刃を当てたマガナギは、にたりと醜悪な笑みを浮かべる。使っている体は同じでも、魂が異なるだけで表情はまるで別人だ。くつくつと喉を鳴らす魔剣は、その刀身をゆっくりと首に沈めた。ぷつりと切れた肌からは赤い血が流れ出し、地面へと落ちていく。


「総悟!」
「っ、テメェ!」


近藤や土方を始めとした真選組の者達は焦りに声を上げた。このままでは殺されてしまうと。事情を知らずとも、目の前にいるのが仲間の姿をした敵だと気付いているはずだ。唯一、刀に縁のある土方は殺そうと試みた。大事にしている少年の体を勝手に使われていることに、耐えられなかったのだろう。しかし剣の腕は真選組随一。敵うはずがない。刀を喰われて戦う武器のない彼等に魔剣が斬りかかれば一瞬で首が飛ぶ。


「おいおい何してんの?勝負は俺の勝ちってことでいいのか?」
『…冗談さ。ただ奴等の顔が面白くてな。せっかく類稀な器を手に入れたんだ。簡単に手放すわけがないだろう』
「そうだよなー。ドSに関して右に出る奴ァいないぜ。そりゃ貴重だわ。外見だけが取り柄の、中身は最低最悪の変態野郎。俺でも敵わねぇよ。それに加えて宇宙一強い剣を手に入れちゃあオシマイだわ。世界滅ぶわ」
『…何が言いたい?』


意図が読めず苛立ちを露にした刀は地を駆け、突きを繰り広げた。それを僅かな差で避けながら銀髪は言葉を続ける。


「好き勝手やればいいだろ、世界征服でも何でも」
『やらせてもらうさ。お前達を全て殺し尽くした後でな』
「そうそう、やりたいようにやればいい。でもよ、本当にできんの?」
『何を言…っ、…!』


突如として魔剣はその動きを止めた。振り上げた腕は動かずに空中で静止している。まるで見えない誰かが押さえつけているように。そこでようやく、苦痛に歪んだ表情が見えた。


「…まァ…その前に、俺が殺す、けど、な…!」
「だ、そうだぜマガナギ」


あまりの驚きに魔剣は言葉を失った。喰らい尽くした魂が、己のものとなった魂が、体を取り戻しているのだから。すぐさま力を増幅させて抑えつけるも器の抵抗は止まらない。立っていられず地面に膝をついた。


「お前じゃそいつの魂、喰っても消化不良になるだけだ」
『く、そが…!』


ギリリと歯を食いしばり顔を上げると、器に引けを取らないドSの顔がそこにはあった。

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