まだ分からないのか、この器は俺のものだ。自我は既に胃の腑の中。俺達は一つになった。戻る戻らないの話ではない。消化し分解された食物を体中から一つ一つ探し出すようなもの。砂漠で何万ものミクロの粒を見つけて一つの宝石を作り出すようなもの。確かにお前は強い。器に引けを取らない。しかしこの俺に敵うことはないだろう。器の力だけならば勝てたかもしれん。刀の力量が同じならば勝てたかもしれん。けれど俺は俺だけではない。食らった刀の数だけ、食らった人間の数だけ、強さを得ている。数え切れぬ強者を一つの体に収めているのだ。お前一人が敵うはずもない。諦めるが良い。いくら呼び掛けても戻りはしない。今や魔剣マガナギは沖田総悟、沖田総悟は魔剣マガナギなのだから。


「ああ、そうかい」


くるりと体を回転させて剣撃を躱す。繰り広げられる突きを寸前で避けながら、徐々に近付いた。頬を腕を腹を、刀が掠めていく。けれど、ああ、知ったことか、と距離を縮めた。


「お前は知らねぇだろうよ」
『…何?』


俺もアイツも可能性があるのなら一粒ずつ探し出して宝石にする。どんなに時間が掛かっても。諦めの悪さなら人一倍なんだよ。気が遠くなる程のことでもな。


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