顔馴染みの医者が処置室から出てきて、銀時は待合室の椅子から立ち上がった。君はいつもいつも厄介事に巻き込まれるねと言いたげな顔を向けられた後、彼は無言で歩き出す。付いて来い、ということだろう。しばらく病院内を歩くと空いている診察室に入ったので、続くように銀時も足を踏み入れる。散らかった机にはカルテや資料があった。そこに分厚い医学書を置いて医者はペラペラとページを捲っていく。銀時は何も言わずにパイプ椅子に腰掛けてその様子を眺めていた。するとピタリと手が止み、そのページを見せられる。


「彼の血液中に麻薬成分が見られたよ、今流行の薬だ」
「もしかして、こいつか」


懐から取り出した葉を見て、そうだと答えた彼が持つ本にはまったく同じ葉が載っていた。手掛かりになればと土方から手渡された麻薬がこんなところで役に立つとは。特徴のない葉であるが故に本物と見比べないと違いが分からない。専門家が見れば一目瞭然なのだろうが、生憎と自分から見て葉は葉なのだ。紅葉や銀杏とは理由が違う。


「で、こいつァ何の作用がある」
「出回っているものは快楽を得ることだがね、これは加工することによって様々な効果を得られる。例えば燃やし煙とすることで暗示をかけたり、溶かし飲むことで催眠状態にしたり、直接摂取することで人格の変化を伴うこともあるらしい。要は加工すればする程、体への悪影響は少ないし、悪用もされ辛いってわけさ。天人が持ち込んだものだから扱いが難しくて、市民に広まっているのは加工処理されたものばかり。葉自体は出回ってすらいないようだ」
「…だが今回だけは違うだろう、新八も他の連中も」
「ああ」


あれからすぐに甘味屋の周辺一帯を調査したところ、まだ数人ではあるが体内に麻薬成分が見られた。恐らくは沖田総悟という存在を記憶から消したのだろう。そう考えれば辻褄が合う。どうして少年の手掛かりがなかったのか。まさか自分の知らないところで新八まで巻き込まれていたとは意外だったが。


「新八は大丈夫なのか」
「眼鏡くんは量を多く使われたみたいだから、ちょっと時間が掛かるけど問題ない。治療法は今のところ何もないけど副作用も出ていないようだし。ただ、薬が抜けるまで入院してもらうだけさ」
「治るなら構わねェよ」


そう言って銀時は診察室から出て行き、非常口から外に出る。そうして携帯電話を取り出し、無理矢理登録された電話番号へと電話を掛けた。相手はあの子の保護者様だ。


「…とりあえず、報告せにゃいかんかね」

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