「んじゃ、眼鏡が甘味屋にいたのは本当なんだな」
「うん」


素直に頷く九楽々は嘘を吐いているようには見えない。もしも脅されているのなら様子や雰囲気が違うはずだ。長年の勘でそれはないだろうと銀時は思う。少女が言うことには、甘味屋の斜め向かいにある駄菓子屋で、母親と買い物をしていた時に目撃したらしい。ちょうど母親が店の主人と談笑中だったそうだ。眼鏡掛け器もとい新八が、沖田と共に団子を食べていたらしい。話を聞いてすぐに神楽が狡いネと掴みかかったので、ぺシンと頭を叩いておいた。


「刀を喉に突きつけられて団子を食べていたらから覚えてたよ。不憫な眼鏡だなあって。でも二人ともニコニコしていたよ」
「本当ならそれ沖田さんに脅されていますよね。食事中に命の危険に晒されながら笑顔でいられるわけないでしょ、どんだけ図太い神経しているんですか、トゥーレの木並に太いよ」


廃刀令が布かれた街中で刀を向けられたまま笑い合っている姿は、人々の記憶に残る光景だろう。けれど疑問が残る。その甘味屋を含む周辺一帯が、誰も覚えていないのは妙だ。聞き込みを行った時、誰一人として怪しい様子はなかった。ただ、沖田がいないことを不思議に思っていた。新八もそうだ。少女はその姿を見たというのに、本人は一切覚えがない。


「…新八ィ」
「はい、何ですか」
「三日前ってお前何してたっけ。一日の行動、全部思い出せるか?」
「えーとですね、…朝に万事屋に来て掃除をして。昼ご飯は食べずに買い物に行きましたよね。帰ってからは夕飯の支度をして、そのまま万事屋に泊まりましたっけ」
「買い物中に何をしてた?」


そう問うと新八は必死に記憶の欠片をかき集めているらしい。うーん、と唸ったまま考え込む。何かあったとすれば自分が傍にいなかった買い物の最中だ。少女の話が全て事実ならば己と神楽は関わりがないだろう。


「…おい新八、無理するな。顔が真っ青だぞ」
「まるで姉御の作り出した暗黒物質を食べて腹を下した時の銀ちゃんみたいヨ」
「……、具体的すぎ…でしょ、それ…。…なんか、やば」
「新八!?」


ぐらりと新八の体が揺れて、前のめりに倒れる。すぐさま銀時は彼を支えて抱き抱えた。脈が早く息が浅い。やはり何かをされたのだと直感的に理解した。沖田と関わったことを隠蔽するために、何らかの細工を施されたのだろうか。今は考えても分からない。とにかく新八を病院に連れて行かなければ。此処の近くには大江戸病院があるはずだ、と走り出す。神楽には九楽々と一緒にいてくれと叫んだ。手を振って了解したと答えた彼女はとても頼もしく感じられた。

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