「いなくなったのは三日前だ」


場所を万事屋へと移し、そう言って手渡されたのは一枚の写真。見知った少年がやる気のない表情でピースサインをしている姿が写っていた。沖田総悟。真選組一番隊隊長。神楽とは犬猿の仲であり、自分も万事屋として関わりがある。受け取った写真を右隣に座る新八へと渡す。左隣に座る神楽はいつものように酢昆布を噛んでいるが表情は暗い。何だかんだで心配はしているのだろう。


「…で、手掛かりとかは」
「いなくなったと思われる甘味屋の近くに葉が落ちていた」
「葉っぱァ?おいおいもしかして総一郎くんって実は狸でよぉ、サボるために変身してお前等の見えないところで嘲笑ってんじゃねぇの」
「ンな訳あるか馬鹿も休み休み言え!葉でもただの葉じゃねぇ、薬だ」


土方は懐から袋に入った葉の一枚を見せた。特徴的なところはない。どう見ても道端に落ちている葉だ。話によると麻薬の一種で、副作用として幻覚や幻聴を引き起こすらしい。以前から攘夷浪士による麻薬の密輸が問題となっていて、真選組は調査を進めていたようだ。今回の一件が何処の組織と関わっているのかは分からない。ただ、立場上沖田は攘夷浪士の標的の的になる。誰が狙ってもおかしくはない。


「…総悟は馬鹿を極めた馬鹿だ。けどな、剣の腕は真選組でも群を抜く。そのアイツが簡単に攫われたとあっちゃ、真選組の名が落ちる」
「今更かよ。当の昔に真選組の評判はマントルにまで落ちてるじゃん。ゴリラとかストーカーとか、ニコチン依存症とかマヨラーとか。欠点だらけじゃね?むしろサディスティック星の馬鹿田くんの方がマシなんじゃね?」
「……真選組が攘夷時代の英雄を討ち取ったら名が馳せるなあ、オイ。打ち首にしてやろうか?あ?」
「やれるもんならやってみろよ」
「やめろお前ら」


銀時の挑発に乗って土方が剣を抜きかけた時、今まで黙っていた近藤が両者に拳骨を下した。しかしその表情は子供を叱る親のような、穏やかな笑顔だった。


「まるでトシと総悟の喧嘩を見ているようだよ、思わず笑っちまった。ありがとな万事屋」
「…知るかよ、俺ァただ事実を言っただけだ」


だけどテメー等はやっぱり三人で騒いでる方がお似合いだわ、と、銀時は呟く。屯所で依頼をされてからずっと気味が悪かった。落ち込んでいると目に見て分かる。どちらもらしくない。上がそれでは士気が下がるだろう。探し者も見つからなくなる。


「気持ち悪ィな、それで励ましたつもりか」
「勘違いすんじゃねーよ、俺は馬鹿は馬鹿なりに馬鹿やってろって思っただけだ」


いつの間にか憎まれ口を叩きつつも土方は笑みを浮かべていた。まったく過保護な保護者様だと銀時は溜め息を吐いたが、それはお互い様ですよと新八に突っ込まれた。

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