その日、万事屋に依頼が舞い込んだのは、ただの偶然だった。柿を盗み食いしようとした場所が、たまたま真選組の屯所だったというだけ。欲望に忠実な二人があまりの空腹のため、ストッパーが不在なのをいいことに盗みを働いたのだ。当然、場所が場所なだけにすぐ捕まった。そうして悲しくも事情聴取を受ける羽目になったのだ。しかしながら連れてこられた先は屯所のとある一室。ジミーこと山崎に案内されたその部屋には、珍しく険しい顔付きのゴリラもとい近藤と、相変わらずの仏頂面である土方がいて。ああ、これはまた面倒事に巻き込まれるだろうと万事屋の主である坂田銀時は思った。


「警察の目の前で窃盗たァ、いい度胸じゃねぇか」
「こっちだって死活問題なんですー。道にはみ出してる柿を頂戴して何が悪ぃ」
「そうヨ、銀ちゃんの言う通りネ!私はちゃんと塀から出ている柿しか食べてないアル!」
「…道に出ているねぇ、あの木を見てもそれが言えるか?オラ、じっくり眺めてみろや」


土方が指差す先にあるのは先程二人が盗み食いをした柿の木、であった木だ。今や柿が一つもない、ただの寂しい木となっている。銀時と神楽は凝視した上で、いやいや元からああだったんでしょ、と屁理屈をこね始めた。しかしながら理解ある間柄だ、こんなやり取りは茶番でしかない。


「こっちはどうとでも手続きが出来るんだ、何なら打ち首にすっぞ」
「ちょっとちょっと、聞いたか神楽!職権乱用だよこのマヨラー野郎!」
「純粋無垢な少女に対して打ち首だなんて残酷ヨ、どうせなら超豪華懐石料理の食い過ぎ刑にするべきネ!」
「あ、いや、そこじゃなくて」


ぎゃあぎゃあと三人が騒がしく言い合う中、今まで静かだった近藤が口を開いた。


「万事屋よ、トシの言う通りだ。お前を打ち首にする程度、俺達には出来る」
「………へー、警察が善良な一般人を私情で殺すって?」
「簡単なことだ」


目には研ぎ澄まされた刃のように、瞬時に人を射殺すことが出来る程の殺気が込められていた。銀時とて二人が何のために捕え、招いたのか察している。この場に少年がいない事実、隊士や彼らの様子を見れば、良からぬことがあったのだと。隣にいる神楽も気付いているのだ。


「万事屋銀ちゃんに依頼、ね」


それで罪が問われぬならば仕方ない、引き受けましょうか。

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