「まァ今んとこ分かったのはこんなところだ」
「なるほどな、連中も子供だからと高を括ったってわけか。まさか話すわけもねェと」
「それに燃やしたところで煙は上に昇るらしいからな、子供の身長じゃあどちらにせよ吸い込まないってよ」


甘味屋の近くで出会った少女から聞いた話とともに、考えられる可能性も話す。恐らく現場に居合わせた新八、もしくは一般人を人質に取り、沖田を誘拐したのだろう。真選組に怨みを持つ者による犯行か、沖田個人に憎しみを持つ者による犯行か。どちらにしても犯人側からの要求は一切ないらしい。面倒だ。何かしらの動きがあれば手掛かりも増えるというのに。


「…こっちとしてはどんな考えがあったかなんて関係ねェ、少しでも手掛かりが掴めただけで充分だ」


そう言って土方は机の上に茶封筒を置いた。


「…何だよこりゃ」
「ご苦労だったな、報酬だ。テメェンとこの眼鏡を巻き込んで悪かった」


封筒を開けて中を確認すると、何ヶ月も生活できる程度の札束が入っていた。沖田含めて真選組は何十何百何千もの人間に恨まれている。関われば命の危険が伴うことを、彼等は重々理解しているのだ。これ以上、子供達を巻き込まないために。奴なりの配慮なのだろう。ふざけるなと思った。だから気に食わないのだと。腹が立って封筒をニコチン野郎の顔に投げつける。


「………」
「あ、手が滑った〜」
「ぶっ殺すぞ腐れ天パァァァ!」


今にも斬りかかりそうな土方を傍にいた山崎が抑える。刀を抜くのなら構わない。こちらとて負ける気はない。今、虫の居所が悪いのだ。殺し合いになった方がむしろ都合が良かった。ちょうど良いストレス発散になる。


「巻き込んで悪ィだァ?今更なんだよ、こっちは既に巻き込まれて全身にコードが絡まってんだ。金を寄越すなら最初から巻き込むんじゃねェや」
「だから言ってんだろーが。次はあのチャイナ娘も巻き込まれるぜ。テメェはその頭ァ掃除機に巻き込まれた方がいいだろうけどな」
「そうだな、いっそヅラにしてストパーに…じゃねェだろコルァ!」


近くに落ちていた封筒で、もう一度、マヨラー野郎の頭をパァンと叩いた。


「だから俺ン家の眼鏡が巻き込まれてるんだよ。過去形じゃなくて現在進行形で。お宅の馬鹿田くんを拐った奴等を捕まえなきゃ危ねェし、巻き込んだ落とし前をつけさせてもらわなきゃな。それに総一郎くんは大親友だし」
「おい、いつから総悟と親友になったんだ」
「友達って奴ァ今日からなるとか決めるんじゃなく、いつの間にかなってるモンなんだよ」


以前少年に言われた台詞をそっくりそのまま使う。あの時は友達だからと振り回されたのだ。今度はこちらが友達だからと振り回してもいいだろう。渋々了承した彼の上司の表情には僅かな安堵が含まれていた。力を貸してやるとは言わない。力を貸せとも言わない。互いに暗黙の了解であると知っていたから。

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