「で、誰にも会えねぇし、暇で暇でよー」
「そもそもお前が無茶したからだろ?医院長に感謝しなきゃな」
「だったら退院するまで個室にしてくれれば良かっただろ。今更部屋を移すって」


医院長の私情が入っている気がしてならないのは気のせいではないだろう。何を考えているのか分からない人だけれど、自己中心的な性格をしているのは確かだった。もう退院間近だというのに。ぐちぐち文句を垂れていると、スカイハイが傍らに歩み寄ってきた。そして大きく両手を広げ、勢いをつけて抱きつかれた。


「おぉう!?」
「気にすることはないぞワイルド君!」
「なっ、何がだ!というか俺、怪我人なんだけど!」
「おっと…すまない、そしてすまない。けれど私達と一緒じゃなくて寂しかったんだろう?気にすることはない、存分に甘えたまえ」
「俺は子供じゃねぇっつの!」


スカイハイを引き剥がしてベッドに横になると、隣にいたロックバイソンが口元を綻ばせた。やっぱりお前がいると騒がしいな、とは失礼な話である。こちらとしては馬鹿騒ぎをする気分ではないというのに。


「見舞いに来たわよー…って、え!?タイガー!?」
「おぅ、ブルーローズ。ドラゴンキッドにネイサンも、久し振りだな」


朝食を片付け終わったタイミングで、女子組が病室に入って来た。昨日まではいなかったはずの自分の姿を見るなり、ブルーローズは慌てて部屋を飛び出して行く。今度は何事だとネイサンに問うと、女の子の事情よとウインク付きで答えられた。ああ、なるほど男には確かに言えないな。


「タイガーは中華まん食べる?お見舞いに何がいいかなって思って、ボク持ってきたんだ」
「食べる食べる!病院の飯って味気なくてさ!」
「あらあら塩分は控えめにねお父さん」
「…それを言うかお前」


ネイサンに厳しいところを突かれ、冷や汗を流しながらも中華まんを頬張る。欲を言うならジャンクフードを食べたかったが、そこは素直に好意を受け取っておこう。しかしながら、どうしても気になることが一つあった。


「なぁ、バニーは?」
「ハンサムならあんたがいない分、仕事を頑張っているわよ」


だから今日も病院に来ることが出来ないって言ってたわ、と溜め息を吐いてネイサンは答える。どうやらここ数日、見舞いにすら来れない程、ハードスケジュールだそうだ。幸いなことに顔や頭の怪我は軽症だったバーナビーは二日入院した後に退院した。しかし完治したわけではないので専属の看護師が仕事場で治療を行なっているとのことだ。そっか、と俯き加減に呟くと、ネイサンが耳元でこっそり囁いた。


「寂しいみたいよ、あっちも」
「…っお、俺は寂しくなんか…!」
「はいはい、強がりは一人前よねまったく」


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