昨日は妙な出来事があったものの、ベッドに横になればすぐに眠気が襲ってきて。目が覚めればいつもの太陽が空にあった。時計を見ればもうすぐ7時だ。今日も退屈な一日が始まるのだろう。誰にも会えず、何もすることなく。ヒーローが病室に籠ったままでいいのか。PDAが無い今、みんなが出勤しているのかすら分からない。テレビもHERO TVを放送しているチャンネルが映らないのだ。恐らくは病院側の配慮だろう。あの医院長め、と悪態をつきながら、そろそろ来るであろう朝食を待つ。足音が近付いてきた。腹も空いたし、楽しみといえば食事ぐらいだ。ガラッ、と扉の開く音がした。


「おはようございます、鏑木さん」
「おはよーさん。今日の朝飯は何ですかね?」
「朝食はみなさんと一緒に…、先に病室を移ることになりましたので、準備をしてください」
「あっそ、って、え!?どうして病室を!?何でですか?え?え!?」


看護婦は看護婦らしからぬ引き攣った笑顔を浮かべながら言葉を濁す。訳が分からないままとりあえずは言われた通りに僅かな荷物をまとめると、車椅子に乗せられた。歩けないほどの重症は負ったが、もう傷も塞がったし大丈夫なのだけど。


「…えっと、事情だけでも話してくれない?」
「私にも突然のことですので、医院長に直接お尋ねください」


何を考えているんだあの医院長は。心の中で溜め息を吐きながら、大人しく連れられた病室に辿り着いた。あれ、待てよ。見覚えがあるぞ此処は。静かに開けられたドアの向こうには、ほら、いた。


「虎徹!?」
「わっ、タイガーさん!?」
「おや久しぶりだね、ワイルド君!」


見慣れた面子が大人しくベッドに横になっていたのだ。

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