今日も暇だったな、とテレビを眺めながらぼんやりと思う。面会謝絶のまま一週間が過ぎた。出歩けるまで体は回復したにも関わらず、院内の中すら歩けない。あのクソ院長め、と見慣れた顔を思い出しながら、そろそろ眠るかと欠伸をした時。部屋の扉が、静かに開いたのだ。看護婦が来たのだろうかと目を向けるも、そこには薄暗い廊下が見えるのみ。誰かの悪戯だろうか。面倒臭いなと立ち上がり、閉めようと扉に手をかける。瞬間、何かが全身を駆け巡る感じがした。


「ねぇ」
「っだぁ!?」


突然の事態に思わず叫んでしまい、慌てて口を閉ざす。声の聞こえた方を見れば、部屋の中に小さな女の子が一人佇んでいた。いつの間に入って来たのだろうと疑問が浮かぶも、言葉にする前に遠くで看護婦の話し声が聞こえる。見回りが来たらしい。何かの手違いで迷い込んだこの子を預けよう。視線を廊下の向こう側へ送り、再び部屋に戻す。けれど少女の姿は、消えていた。


「………え?」
「あらあら鏑木さん、どうしたんですか?」
「…いや、今さ、女の子がいたんだけど…いなくなっちまって」


ただの見間違いではないはずだ、声も聞こえたのに。何処に行ってしまったのだろう。看護婦に頼んで探してもらった方がいいのだろうか。相談するべきかどうか悩み、彼女達の様子を伺った虎徹はさらに疑問が増えることになった。彼女達は青ざめた顔で虎徹を一度見、頷き合い、顔つきを変えたのだ。


「鏑木さん、とりあえず今日はお休みください」
「ちょっ…お宅ら、どうしたの!?」
「お願いです!部屋に戻って!」
「っ、はいはい分かったよ」


尋常ではない様子にそそくさと部屋に入ると、カチャンと外から鍵を掛けられた。何なのだ一体。しかし反応から見るに、自分は踏み入ってはならない領域に片足を突っ込んだようだ。こんな時にバーナビーがいてくれればな、と相棒の姿を思い出す。会いたい、なんて、本人の前では言わないけれど。

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