「揃いも揃って入院なんて、事件があったらどうするのよ」


林檎の皮を果物ナイフで器用に剥きながら、カリーナは大きな溜め息を吐く。ジェイクとの戦いの後、バーナビーも傷の手当てで入院する破目になった。キースとアントニオ、イワンの傷は治りつつある。しかし何らかの事件があった場合、出勤してもヒーローとして戦えるかどうかは難しい。そして最も厄介なのが虎徹だ。一時は死にかけた彼だが、無理をして戦場へ向かったために再び傷が開き、一人個室へと移された。虎徹以外は同室であり、こうして見舞いに来ても話すことが出来る。けれど虎徹は思っていた以上に傷が酷く、面会お断りなのだそうだ。彼の知り合いである病院長が決定したことらしい。曰く、友人がいるとまた無茶をしかねない。まったくもって病院長は理解している。


「そういえば、この病院って出るらしいね」


カリーナが虎徹に対しての不満を話している中、思い出したようにホァンが言った。途端、アントニオの体が石のように固まる。どうやらこの手の話は苦手のようだ。


「何処の病院にもゴーストの話はあるものねぇ」
「暇つぶしにはちょうどいいんじゃないですか」
「…ジャパニーズホラーは、怖いです…」


各々が興味を示すも、面白そう、怖そう、など反応は様々だ。彼らの心の準備が整ったのを見て、ホァンはちょっと話は長くなるんだけど、と前置きをする。


「事故で父親を亡くした女の子が夜な夜な現れるんだって。お父さんは何処にいるの、寂しいよって。その子の母親は病気で亡くなっていて、だから唯一の家族がお父さんだったんだね。それで、お父さんの代わりになる人を見つけると、連れて行っちゃうらしいよ。……あの世に」


ぞくぞくっと背筋が寒くなるのを感じ、誰かが悲鳴を漏らした。しかしそれは話の内容ではなく、ホァンの表情があまりにも恐ろしくて、だが。


「でもさ、不思議なことにその子は生きているのか死んでいるのか分からないみたいだよ」
「え?それってどういうこと?死んでいるから幽霊、なんでしょ?」
「…うーん、そうなんだけどね…」


女の子の死亡は確認されていないみたい。


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