迷える子供たちの前に現れたのは、

 一人の老人だった。





12
出航・新大陸へ! 前編




 

 いきなり現れた老人に子供たちはデビモンの仲間か、と身構える。
 だが老人は『心配せんでいい、わしはお前さんたちの仲間じゃ』と穏やかな口調で宥めた。

「私たちの他にもこの世界に人間がいたなんて」
『じゃがわしは人間であって人間でない』
「オバケなの?」
『……わしの名はゲンナイ。
今までデビモンの妨害があってなかなか通信できんがったが、やっと会えたのぅ』
「つ、通信って」
「どこからしてんだ?」
『ここから遠く離れた海の向こう――サーバ大陸からじゃ』

 様々な疑問が飛び交う。
 いつからここにいるんだ、とか、ゲンナイが倖たちをここに連れてきたのか、とか。
 ゲンナイはその質問に一つずつ丁寧に答えた。
 彼は最初からこの世界にいて、倖たちを呼んだのは自分ではないと。
 そして倖たちを呼んだ者の正体や元の世界に帰る方法などは一切知らないことを述べた。

「なんだよ頼りになんねージイサンだな!」と太一が悪態を吐く。
『……じゃがわしはお前さんたちを頼りにしとるぞ。
サーバ大陸に来て敵を倒してくれ。選ばれし子供たちならできるはずじゃ』
「来いと言われても場所がわかりません」と、光子郎。
『それもそうじゃな。今お前のパソコンに地図を送ってやろう』
「でもデビモンより強い敵なんて倒せるはずないよ!」

 確かにデビモンとの戦いでは、エンジェモンを除くデジモンたちはまるで歯が立っていなかった。
 加えて彼より強い敵が現れるというのなら、丈の言う通り倒せる見込みなんてまったくないのだ。

『いや。お前たちのデジモンがもう一段階進化すればそれも可能じゃ』
「ボクたちがもっと進化する?!」
「確かにオラたちが進化しても強い、アンドロモンとかもんざえモンなんかがいるけど」
『その為にはこれが必要じゃ』

 するとゲンナイの姿はフェードアウトし、代わりにペンダントとチップが映し出された。
 ペンダントはタグといい、チップは紋章と呼ばれる。
 タグに紋章をはめこめば、デジモンたちは更なる進化をするのだそうだ。
 だが肝心の在処はわかっていなかった。
 タグはデビモンがまとめてどこかへ封印し、紋章はサーバ大陸のあちこちにばらまかれてしまったのだ。
 ――と、告げた瞬間ゲンナイの姿が途切れ途切れになっていく。何が起こっているのかわからないまま、ゲンナイは消えてしまった。

「……地図は無事届いたようです」
「これからどうする?」
「とりあえず山を降りよう!
まず何か食って、決めるのはそれからだ!」



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