再び草原に出た子供たちは、たくさんの自動販売機を見つけた。
 こんなところにあるなんておかしい――と思うが、何だかもう慣れてしまっていた。恐ろしいものである。
 先ほどコーラを飲みたいと言っていたミミは丈の止める声も聞かず、走っていく。

「まったく」
「しょうがないわよ、まだ子供なんだもん」
(私たちも子供だけどね)

 とは口に出さない倖であった。
 自動販売機に向かったミミはお金を入れ、ボタンを押す。

「オネーチャン!」
「ヌメモン?!」

 しかし出てきたのは飲み物ではなく、撒いたはずのヌメモンだった。
 下品な笑いをこぼしながら、

「デートしなぁい?」
「ミミのことナンパしてるわよ、どうする?」
「えぇっ?!どうもしないわよ!何でアタシがこんな奴とデートしなきゃなんないのよ!!」
「怒らせちゃダメよ」
「平気よ。だって太陽の光の下じゃ――あ、」

 頼みの綱である太陽は、雲に覆われていく。
 後悔先に立たず。――怒ったヌメモンは仲間を呼び寄せ、ミミに排泄物を投げつけるのだった。

「またヌメモン?!」
「あああ、あんなにたくさん……」

 地下水路にいた数を上回るのではないだろうか。
 とにかく逃げなくては。子供たちは再び追いかけっこを始めることになってしまうのだった。
 ヤマトが「別れて逃げよう!」と提案し、四方八方に別れる。

「あいつらいつまで追ってくるの?!」
「倖、伏せろっ!」

 咄嗟に倖は伏せる。頭上を例の排泄物が過った。
 目の前にはヌメモンが三匹いる。――追いつかれた。

「おらたちをバカにした罪は重いぜぇ」
「罪ってオラたちは何もしてないだろ!」
「うるさい!これでも食らえニーチャンども!!」
「に、兄ーチャン?……つまりそれは」

 ヌメモンらは倖を男と勘違いしているようだ。確かに倖は女の子らしい着飾った物は何一つ着けていない。加えて服装もそれらしいのを身につけていない。
 だからといって、こんな奴らに勘違いされるとは。顔には出ていないものの、結構なショックである。

「お前ら、いい加減にしろ!
ファイア……!!」
「ギャー!」
「逃げろぉ!」
「退散だ退散だぁ!」

 ――と、ギルモンが技を放つ前に、ヌメモンたちは逃げていった。逃げ足だけは早い奴らだ。

「まったく調子狂うよな。
な、ゆ……倖さん?」
「………………」
(倖ってば、さっきの気にしてるのか)

 久々の不機嫌オーラにギルモンは思わず後退りする。
 話しかけないのが吉だが、遠くに遊園地らしきものを見つけたギルモンはおずおずと倖に話しかけた。

「なんでこんな所に遊園地が」
「わからないが、行ってみないか?みんな散り散りになっちゃってどこ行ったかわからないし」
「みんな遊園地にいる、と?
――まあ可能性はなくもないか……うん、行ってみましょう」



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