「ここは」
「爆弾テロがあった場所だ!」

 バードラモンたちを追いかけていると、いつの間にか爆弾テロが起こったという場所に着いていた。
 すでに避難したのか人や車は見当たらない。
 二つの向かい合わせになった団地を繋ぐ陸橋を見上げ、ふと脳裏に映像が過る。
 ゆっくりと思い出すようにと倖は瞳を閉じる――
 ――団地にはさまれた、この陸橋で、二つの“何か”がいた。
 幼い頃の自分は、“それ”を家からずっと見ていた!
 ほかの子供たちも同じく思い出したらしく「あのときもこんな感じだった!」と張り上げた。

「あのときと同じだ。
火の玉が陸橋を壊したんだ!」
「いや、あのとき火を噴いたのは飛んでた方じゃない!
もう一匹の方だ!」
「そうだ。戦ってたんだ。
“何か”と、“何か”が!」

 一体何だったのか――
 しかしその間にもバードラモンはマンモンと戦っている。
 マンモンは強烈な冷気を吹きかけ、まともに受けたバードラモンは固い地に堕ちてしまった。

「バードラモン!!」
「空……!」

 そのとき空の胸が――紋章が、赤く輝いた!

バードラモン超進化!
――ガルダモン!!


 進化したガルダモンに危機を感じたのか、マンモンは建物を壊し、瓦礫の雨を降らせる。
 ガルダモンは駆け寄った太一と空をすかさず庇う。
 庇うその姿に、太一は泉が沸かんばかりに懐古が溢れ漏れてゆく。

「あのとき見たのは――」

 重なる夕日色の面影。

「怪獣なんかじゃない――!」

 あのとき、“助けてくれた”のは

「“グレイモン”……?」

 四年前、太一とヒカリの前に現れ、助けてくれたのは――グレイモンだった。

「――そうだ!グレイモンだ!!」

 とたんに声が沸き上がる。
 全員が見た。この陸橋で、家の扉から出て見た。
 夕日色の恐竜と、緑の鳥。
 あれは紛れもなくグレイモンと名の知らぬデジモンだったのだ!

「あの日、俺の家にコロモンが来たんだ。
コロモンはアグモンになり、
そしてグレイモンになって
――もう一匹のデジモンと戦ったんだ……!」

 何で忘れていたんだろう。
 四年前。たった一日の、あんなにも大きくて、かけがえのない大切な――出逢いの日を。

シャドーウィング!!

 ガルダモンはマンモンを空へ放り投げ、コンクリートに叩きつける。
 仰向けのマンモンはなかなか体勢を立て直せず、そこへガルダモンが必殺の技を放った。
 赤い影はまっすぐにマンモンへ向かい――その身を切り裂いたのであった。
 粒子となって消えたマンモンを確認すると、ガルダモンもといピョコモンが空の元へ戻る。
 荒れ果てた道路――四年前と同じだ。

「戦いの後、二匹はどこかに消えていった」
「そうでしたね」
「それで爆弾テロってことになったのか」
「これじゃ犯人も捕まえようがないな。――ってことは、ヒカリちゃんがコロモンのことを知ってるた理由もわかったね」
「ああ。ヒカリのやつ、あのとき会ってたんだ!」
「会ってたの?」
「きっと別のコロモンだよ。
でも、最初に太一に出会ったとき、とっても懐かしい気がしたんだ……」

 ゆるゆると笑うコロモンは、とても嬉しそうだった。
 ――戦いが終わった後の沈黙が広がる中、たくさんのサイレンが聞こえはじめる。
 遠くからこちらに向かうパトカーや消防車が見える。

「マズイ、捕まるといろいろ訊かれるぞ!」
「すぐには帰してくれないですよね」

 倖たちはいそいそとその場を離れる。
 事情聴取なんてされたら、どれだけのロスになることやら。
 離れた草木の萌える場で、一息吐く。ここならパトカーも来ないし、周りに人もいない。
 光子郎が口を開いた。

「前々から不思議に思ってたんです。
キャンプにあれだけの子供が来ていたのに、どうしてボクたちだけが選ばれたんだろう……って。
でも今日謎をとく手がかりがやっと掴めました」
「四年前の事件――」

 ミミのそれに光子郎は頷く。
 ここに揃う八人の子供たちには、大きな共通点があったのだ。
 四年前、すでにデジモンに逢っていたという共通点!

「それじゃあ、ひょっとして九人目も!」
「……なるほど。
私たちの共通性を考えるに辺り、繋がる答えは一つだね」

 九人目は間違いなく事件の目撃者であること。
 すなわち、光が丘に住んでいたということ――

「だったらもうヴァンデモンが見つけちゃったんじゃないの?!」
「それはちゃいまんな。
マンモンがあないなところ一匹でうろうろしてたっちゅーことは――ほかの連中は、九人目を探してあちこち行ったってことですわ!」

 ……一つ、大きく歩みを踏めた。
 この共通点はきっと子供たちにしかわからないはず。
 闇雲に探すヴァンデモンより、有利になったというわけだ。

「――見つけるんだ。あいつらより早く。
九人目の選ばれし子供を。
俺たちの仲間を!」

 子供たちは決意を新たに、まだ見ぬ仲間へ視線を注ぐのであった。


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