爆熱丸は白目をひんむいて倒れている。なにをしたのか、なんて推して知るべし。

「む?」

 キャプテンの額センサーが点滅を繰り返す。ダークアクシズのご登場らしい。

「それでは、少しの間ここで大人しくしているのだぞ」

 精霊をシュウトの小屋に入れるゼロ。
 精霊は不思議そうに彼を見つめている。
 生まれたばかりだから、見るものすべてが珍しく思えるのだろう。好奇心いっぱいなのは構わないが、今はまだ戦いに巻き込むわけにはいかない。
 ……それにしてもあの小屋、ちゃんと窓にも鍵をかけただろうか?シュウトはそういうとこ抜けてるから、ちょっと心配だ。といって確認するほどの時間はない。

「行こう、ゼロ!」
「ああ。……爆熱丸!いつまで伸びているんだ!」

 え?爆熱丸ったらいつの間に寝ちゃったんだろうなぁ。
 きっとだれかが、それはそれは素敵な眠り歌を歌ってあげたからだね。……ねっ?




 ガンバイカーに乗って訪れた場所は、ネオトピアの街から離れた荒野のど真ん中。
 ラクロアでの事件かあってか、あのダークアクシズ・バカトリオを見るのは久しぶりに思えた。嬉しくないけど。

「見つけたぞ!ダークアクシズ!」
「ネオトピアへの侵攻に対し、こちらは武装火器の使用を認められている。
侵略行為を停止し、速やかに撤収せよ!」
「ああ、あいつら空飛んでるよ!」

 背中にバックパック――どうやら飛行ユニットを搭載しているらしい――なんかを取りつけ、宙に浮いている。
 前はあんなもの持ってなかったはず。

「ちょこざいな!」
「ワタシより高く飛ぶなど、許さん!」
「いいなぁー。空飛べて……じゃなくて!
そこの三バカ!今すぐ降伏しろー!!」
「だれが三バカだぁ!
このくそ忙しいときに、邪魔な奴らめ!
ああ?」

 ザッパーザクたちの間に割り込むのは、奴らが毎回乗ってくる戦闘機。たしかコムサイとか言ったか。
 でたらめな動きは明らかに理性を失っているように見える。機械に理性も何もない……とは思うが。

「あれ?色が違う!」
「新型艦か?」

 普段はあの巨大戦艦――マグナムサイと同様に、赤黒かったはず。だが今回は黄色だ。
 もしや先日、憂さ晴らしにとあたしが爆弾のスイッチを押してやったおかげで、前のコムサイは壊れた……とか?

「セレナがとどめをさしたんだったな?前のは」
「請求書とか求められちゃうのかなぁ」
「悪のダークアクシズが請求書求めてどーするっ!
いいの!あたしたちは正義の味方なんだから、敵のモン壊そうが改造しようが許されるのーっ!!」

 というあたしの叫びに呼応するかのように、新型コムサイはミサイルを次々と落としていく!

「うわあぁぁ?!」
「ひえぇぇぇ?!」

 ガンバイカーは爆煙の中を掻い潜り、炎天號もスピードを上げて逃げる。
 急停止するとキャプテンがビームライフルを構え、コムサイに向かって発射する!――と思ったが、コムサイもただやられるだけでは終わらないらしい。
 穴が空きまくったチーズを思い浮かべてほしい。そんなおもしろい見た目の小型兵器が多数飛び出し、ビームを屈折させる!

「何っ?!」
「どわーっ!」
「うぅっ?!」
「火、ヒーン!」

 ビームはゼロたちに向かって跳ね返された。
 鏡の反射の原理でも使っているのだろう。一つだけ狙い撃ちしても屈折して周りの兵器と繋いでしまうから、壊すなら一気に壊さなければ。

「おおっ!」
「なかなかやるな、コムサイ!」
「いいぞー、いいぞー」

 くそー。見下しやがって。
 よく目を凝らすと、コムサイにはたくさんのコントロールホーンが装着されていた。機械を操るはずの角が、どうしてコムサイにくっついているのか知らないが――暴走の理由はあの角らしい。
 大方、ドジな奴らだからついうっかりでコントロールホーンをつけてしまったのだろう。

「出でよ!ヴァトラスソード!
ヴァイオレット・トルネード!

 青薔薇の花弁が、渦を巻いてコムサイに降り注ぐ。
 進行を止めることはできた。――が、しかし。
 コムサイは風に乗って高速回転しながら、ミサイルをあっちこっちに振り撒く!
 さっきよりひどくなってるぅ!

「どおっ?!」
「事態を悪化させてどうすんの、ゼロー!!」
「なんということだーっ!」
「やったー、ざまみろー!」
「なぁんかいい感じじゃん!なぁんか、いけそう?」
「やったー!」

 このっ……!
 今すぐにでも殴りかかりたいところだが、いかんせんコムサイの暴走弾幕のせいで逃げることしかできない。
 ようやく魔法の風が止まると、コムサイは旋回する。ミサイル祭りが収まり、一息吐く。
 ――同時に、炎の吐息がコムサイに向かって放たれた。
 あの炎は?!……まさかっ!

「フェ〜ン!!」

 シュウトの小屋に入れたはずの――幼き精霊だった。

「シュウトー!だから窓はちゃんと閉めろって言ってるのにー!!」
「わー!ごめんなさぁーい!」

 人が口を酸っぱくして何度も言ったのに!結果がこの最悪な事態である。
 ゼロを追いかけに来たところ、突然方向を変えたコムサイにびっくりしているのだ。
 コムサイは鬱陶しく思ったのか、炎を突っ切って精霊をさらっていった。

「しまった!」
「待て!――くそっ……!」

 ゼロは追いかけようとするが、彼の飛行能力ではとうてい追いつけない。
 あっという間にコムサイは彼方へ飛んでいった。ついでにザッパーザクたちも追いかけていった。




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