本日も晴天。真っ白な雲が空を爽やかに引き立てる。
 っつーのに、あたしの目の前にいるこの武者頑駄無ときたら、そんなもんすべてぶち壊しである。
 爆熱丸。突然別次元からやってきた武者で、帰れる道がなくなっちゃったもんだからS.D.G.に身を置くこととなったやつである。
 なんでも話に聞けば、キザ騎士(ナイト)ことゼロと同じ世界の奴らしいが……雰囲気はまったく正反対だ。
 それは置いて、なぜ奴がシュウトの家でなんであたしがコイツの稽古見てシュウトとキャプテンはいないのか。
 地に足がつかないのは落ち着かないとか言って、あれ以降よくシュウトの家に来るようになった。で、シュウトとキャプテンは小屋で発明品いじり。
 あたしは爆熱丸がアホやらかさないように見張りってこと。
 ……しっかしまー、よくやるよくやる。
 ここに来てずっと刀をぶんぶん振り回して……

「いつまで稽古するつもりなのよ」
「暇があればいつまでも!我が故郷天宮(アーク)を離れど腕をなまらすわけにはいかないからなっ!」
「あー、はいはい」
「お前こそずっとぽけーっとしていていいのか。
だからこんなふにゃふにゃの体なのだ」

 と言いつつまた、ほっぺをつねる爆熱丸。
 だーかーらー!

「ひゃめろって!」
「ははは!よく伸びる!――むおっ?」

 左手に持った刀に、ぽんっ!と小さな音。見ればいつもの青い薔薇が、刃の先に咲いていた。
 屋根に視線を送れば、そこにはゼロが。

「だからそれはやめろと言ってるだろーがー!!」
「こっちの台詞だそれはぁぁぁぁっ!」

 アンタもいい加減ほっぺをつねるのはやめんかぁぁぁぁぁぁぁ!


ROAD:6

激走!ガンバイカー



 既視感(デジャビュ)を感じるのは気のせいではない。
 またしても魔法でおちょくられた爆熱丸が、仕掛けた当人であるゼロを追いかけ回している。
 よくあきないなー。ほんとに。
 爆熱丸の愛馬、炎天號の頭を撫でつつ。ツッコミだなんだしたら負けだ。きっと。

「このぉー!
――ぬおぅっ?!何者だ?!」

 ぶるぉん!というエンジン音が聞こえたかと思えば、一台のバイクが走ってきた!
 なかなかゴツい見た目だが、それゆえに渋みが出ていて、バイク好きの人間がいたら興味津々に眺めていたことであろう。残念ながらそういったものに興味はないのだが――突然人の庭に走ってきた謎のバイクに、さすがのあたしも気にならないわけがなかった。
 サイドカーは人が二人乗れるぐらいの広さをもち、ヘッドライト部分はなんか見たことあるよーな――そう、ガンダムのような顔がついている。
 それにしても不思議なのが、このバイクが無人であることだ。
 異変に気がついたのか、シュウトとキャプテンが小屋から出てきた。
 ……シュウトったら、なんであんな笑顔でこっち来んだ……?

「勝手に人の家に入り込むとは無礼であろう、名を名乗れ!」
「お前が言うかそれ」
「俺はちゃんと名乗って来ているだろう!」
「そーゆーことじゃなくてねぇっ!」
「キャプテンの先生!」

 は?キャプテンの先生?

「ああ?!
なになにこのバイク!すごい!大きい!カッコイイ!
これに乗ってきたのかなあ……ボクも乗せてもらえないかなあ!」

 男の性(さが)なのか、大型バイクを見てシュウトは大はしゃぎである。

「ねえ、爆熱丸、セレナ、キャプテンの先生ってどこに行ったの?」
「先生?」
「来たときからこれに人なんていなかったわよ」
「いや、シュウト、教官は――」

 キャプテンが口を開いた瞬間。
 ぶるるおぉん!
 突如バイクがウィリーをしながらシュウトに襲いかかる!

「シュウトっ!」

「うえ?」
「バーカモンがぁっ!小僧、ワシに乗るなんて百万年早いわっ!」
「ひえぇぇぇ?!バイクに顔がある?!
――もしかしてキャプテンの先生って……」
「うん、このガンバイカーだ。
私の教官のAIを搭載している」
「ええー!」

 シュウトの絶叫が響き渡る。
 キャプテンから詳しく訊いてみると、今日キャプテンの教官が来る――という日だったらしい。
 その教官がガンバイカー。無人バイクである。

「全員せいれーつ!」

 軍人のような気迫にやられ、全員おとなしく横一直線に並ぶ。
 あぁぁ……まためんどい奴が来た。

「いいか!
ワシが来たからには効率的な戦闘の何たるかを、貴様らにみっちり叩き込んでやるからな!」
「フン。このワタシにこれ以上何を教えようというのだ」

 ゼロはどーにもこういうものが嫌いらしい。
 "こんじょー"だの"どりょく"だの、そういうもの苦手そうだもんな……美しくないとか言って。あたしも嫌いだけどね。好き好んでやらんわ。
 ぶるるおぉん!
 またまたガンバイカーが吠える。

「やーかましい!
貴様のように己を過信している奴ほど、自分の力で墓穴を掘るものだ!
ワシにはわかる!」
「ハッハッハッハ!一本とられたな、ゼロ」

 ぶるるるおぉん!

「やかましい!貴様のような奴も実戦では力押しで突っ込んで、自滅するのがオチだ!
ワシにはわかる!」

 ぷぷぷ。二人ともしょんぼりしてやんの。
 武者とか騎士とかってもっといかついイメージだったけれど、こいつらを見ていたらそんなことはなかった。それとも彼らがアホなだけなのか。

「貴様がガンダムフォース特別隊員その二のセレナか?」
「そーですけど」
「しゃきっと返事をせんかいっ!
うむ。セレナ、先程の貴様の反応はよかった。とっさながらにシュウトを守ろうと前に出たな。
しかぁぁぁぁしっ!」

 ぶぶるるるるぉぉぉぉぉん!

「そのふぬけた態度!姿勢!
貴様のような口先だけで生きてきたような奴は自分の発言で自滅するのがオチだ!
ワシにはわかる!」

 …………。




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