とかまぁ、冷静に辺りを観察してる場合じゃなく。
 あたしたちはベルウッドを連れて逃げる。
 あんなもんに当たってたまるか!

「うわああ!」
「ぎゃー!こっち来んな!」

 デストロイヤードムが空から降ってきた!かなりの重量が着地した瞬間、地面が大きく揺れる。
 あいつにプレスでもされたらどーなることやら……体はバラバラに……想像するのはやめよう。

「撃つべし!……ドワッ!」

 キャプテンがデストロイヤードムに激突するものの、すでに発砲されたミサイルはあたしたちへ向かっている!

「来た!」
「ダメじゃねえか!」
「シュウトー!前前前見ろー!」

 ミサイルはあたしたちの目の前にある柱に着弾し、ぐらりと傾く。
 その先には――うろたえるベルウッド!

「うわああぁぁぁぁ?!」
「危ない!」
「シュウト!!」

 ベルウッドを押し、シュウトだけが柱の下へ残る!
 逃げるにも、あたしが庇おうにも間に合わない!
 こうなったら、"アレ"をやるか――

超魔法、アイフィールド!

 聞き覚えのある声がふるりと耳を打つ。
 柱は無慈悲にも崩れ落ち――あたしは「シュウト!」と再び悲鳴にも似た声を上げた。
 が、シュウトの体はまったく無事だった。彼を避けるように柱だったモノが散らばっている。

「キッズ!」
「シュウト、シュウト大丈夫?!」
「う、うん」

 急いで駆け寄って彼の無事を確認する。
 良かった……。
 ついっと空を見上げと、そこにはブルーマントのキザ騎士(ナイト)!

「あれは――ゼロ!」

 キャプテンはグラップラーグフとデストロイヤードムを一蹴し、地上へ降りたゼロと背中合わせをする。

「ゼロ、来てくれると思っていた」
「群れること以上に、卑怯なことが嫌いでな」

 戦い特有の空気が流れる。
 ゼロが来てくれたおかげでキャプテンの負担は軽くなった――が、相手は三人。とついでにザコたち。
 数からすりゃ彼らダークアクシズの方が有利である。

「飛んで火に入る夏の虫よ。
ガンダムども、今日こそ決着をつけてやる。
突撃じゃー!!」
「ドムドムドム!」
『ザコザコザコ!』
「フンッ!」

 ゼロ対グラップラーグフ、キャプテン対ザッパーザクの斬り合いが始まる。
 あちらさんがキャプテンたちに気を取られている隙に、あたしたちは巨大ハンドがくっついた機械に乗ってザコたちを放り投げていく。
 といっても操作してるのはベルウッドで、シュウトとあたしはもっぱら見ているだけだけど。
 しかし所々牽制をすることによって、デストロイヤードムの攻撃を防ぐことができている。

「やったー!命中!」
「ザコも役に立つ!」
「逃げ惑ってる連中を無理矢理掴まえてぶん投げるっつーのも、なかなか酷な気がするけどな」
「さすがセレナ!悪どいこと考えたら」

 ごつっ!

「それ以上言わんでいい」
「……はい……」

 ベルウッドも言い方を変えてほしーもんである。
 こちとら銃火器なんて持ってないんだ。利用できるものはたとえ生きているもんでも敵であろうと、使ったモン勝ちってもんよ。

「めんどくさい……」

 ……およ?
 デストロイヤードムの様子が変わった。ぷるぷる体を震え、何かに堪えているような感じである。
 ……ましゃか……

「こうなったら――ギャロップでぃ!
オペレーション!ジェノサイド、発動!!」

 やにわに怒りを露にし、デストロイヤードムは叫ぶ!
 彼の言葉に応え、ギャロップからビーム砲やら機銃砲やら様々な武器が展開される。
 どわーッ!あんなに武器持ってたんかい!

「ふぁいやあー!」

 ザッパーザクたちの制止も無視して、敵味方関係なく銃弾が降り注ぐ!まさしく大暴走だ。厄介な奴だよ、あいつは!
 傍にいたら危険と判断し、あたしたちは急いでその場から退却する。

「早く!急いで!」
「……キッズの……即席っ、隊員の……くせにぃ……!」
「ボクはガンダムフォースの特別隊員だ、キッズでも即席でもないよ!」
「ったく、ほら!手繋いで!行くよ!」
「ぼ、ボーイガール……!」

 腹立つ呼び方だけど、見捨てて行くのはさすがに夢見が悪くなる。
 無理矢理手を取ってひた走る。こいつ体力なさすぎ!

 ――途端、背中に冷たい予感が迸る。

「ふんくぅっ!」                    
「グランマー!」

 あたしは力のあらん限りベルウッドをぶん投げた。――直後、爆風があたしを襲う!
 ベルウッドは妙な悲鳴を上げつつ、シュウトの上へ覆い被さる。

「セレナ!」
「だ、だいじょーぶい」

 背中がやけに熱いが、意識はしっかりしてる。
 もっと近くで受けてたら確実に危なかったぞ。というか、今の攻撃でもただの人間だったら軽く吹っ飛ばされる程度じゃ済まなかっただろう。特別頑丈なあたしじゃなかったらさらに危なかったぞ。

「女性に怪我を負わせるとは!
我、古き盟約に従いこれを……うくっ!」
「おらおらおらー!」

 デストロイヤードムの暴走を止めようにも、ほかの奴らが行く手を阻む。

「ファイナル……オペレーション!」

 弾幕は濃くなり、次元転送装置が大きく揺れる。
 な、何か雲行きが怪しくなってきたぞ。二つの意味で。




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