Melody-47
栄光のデジクロス、つかめ!
おれたちの未来!!




 空間を割って、出てきた場所はなんと宇宙であった。
 エグザモンとウォーグレイモンがつくりだした球体の結界に守られながら、遥瑠たちは地球を見下ろす。
 ――なんと惨酷な景色か。
 淀む、赤黒い色に塗りつぶされた地球はまるで終焉を示しているよう。
 初めて見る地球の全貌が、あの美しい青でないことにいたく残念に感じる。

「これがバグラモンのD5」
『昔、デジタルワールドの支配を計画していたバグラモンは人間界の存在に気づき、その計画をより大きなものへ変更した。
デジタルワールドも人間界もすべて吸収し、奴の支配した世界を創りだす。
――それがD5なんだ。
私たち騎士団はそれを阻止すべく戦い続けた。
しかし……』と、エグザモン。
『はからずも人間たちのデジタル技術の発達によって、二つの世界の距離がどんどん縮まり――そのエネルギーがコアに歪みを発生させた。
デジタルワールドはついに分裂。崩壊した』と、ウォーグレイモン。
『その影響で騎士団は全員――というと少し語弊があるが、デジメモリになり、ウォーグレイモンと私は次元の狭間へと落ちていったのだ』
「あのときジジモンが言ってたことが、それだったってわけだね」

 ――それはお前さんたち人間が……まあ言わんといておこう

 いつだったか、ジジモンがいいかけた言葉をふと思い出す。
 騎士団の必死な努力を、自分たち人間は知らず知らずに無視して壊していたというわけか。

「お前はこのことを奴から聞いていなかったのか」

 キリハの言う“奴”とはドゥフトモンのことだろう。
 騎士団の一人であったドゥフトモンは遥瑠にD5のことを話さなかった。
 騎士団がバラバラになった理由が人間であったことも……、言わなかった。

「きっとオグドモンとの戦いに集中させるため、言わなかったんだと思う。
ドゥフトモン、あれでけっこー気遣いが上手なんだ」
『ドゥフトモン!彼はあの戦いで逃れたはずだが――そうか、無事に生きていてくれたか』
『通りで君から彼に似た力を感じると思った』

 エグザモンとウォーグレイモンの明るい声音に、遥瑠は詫びの念が込み上げる。
 ドゥフトモンは消えた。遥瑠をかばって、逝ってしまったのだ。

「……ごめんなさい。エグザモン、ウォーグレイモン。
彼はあたしたちに力を授けて、もう」
「オグドモンってデジモンを見つけて、ミチやタイキたちと戦ったのよ。
彼にはずいぶんお世話になったわ。――その報いのために、私たちは戦ってる」
『……そうか。
いいや、何となくそんな気はしたよ。
飄々とした奴だったが、仲間思いの奴なんだ。放っとけないと笑っていた』
「…………」
『ありがとう。ドゥフトモンの傍にいてくれて。
あいつの為に戦ってくれて』

 デジメモリとして浮かぶエグザモンたちの表情はわからない。
 しかしその光は責めているようなものではなく、君のせいじゃないと励ましてくれているようだった。……微笑(わら)ってくれているのだろう。

「――ま、そのおかげで俺たちは助かったんだ。
あとタクティモンのおかげってのもあるな」
「タクティモンの?!」

 思わずタイキが大声を張る。
 タクティモンはソードゾーンでの戦いでシャウトモンたちに吹っ飛ばされたあと、人間界に降臨し倒されたと聞いたが。
 エグザモンたちは永い長い時間、デジメモリとなったまま次元の狭間を漂っていた。
 手も足も動かせない、もどかしさを身に染み込ませながら。

「あのとき、デジタルワールドからこっちに飛ばされてきたタクティモンが次元の狭間通過したんだ。
彼らはそれに巻き込まれてここに来た」
『私たちは空間の入り口に引っかかったまま、君たちとタクティモンの戦いを見守るしかなかった!
そして――』

 突然、空から見知らぬ巨大な腕が橋にかかった。
 暗雲は世界に広がり、人間たちは恐怖に走り逃げる。だが腕――バグラモンの障気から逃れる生き物はいなかった。
 そう。タクティモンが遺した刀を伝って、地球を石化したあの時だ。
 アカリ、ゼンジロウも障気から逃げるものの、追いつかれそうになる。その瞬間宙に浮かんだ――というより、空間に挟まっていた――デジメモリを手にとり、無事難を逃れたのであった。

『アカリとゼンジロウがわたしたちの声に気づかなかったら、あのままみんな石化していただろう』
「まったく、お前たち二人の幸運には呆れるよ。
……だが、そのおかげで俺たちは助かった」
「キリハ」
「礼を言う。アカリ、ゲンゴロウ」
「ゼンジロウと言います!」
「ナイスツッコミ!
デンジロウくん!」
「わざとやってるだろうミチくん?!」

 急なキリハの変化に、二人は戸惑いを隠せないようだ。
 デジタルワールドでは長い間を過ごしたが、人間界ではまだタイキが行ってからそれほど時間は経っていないのだ。

「……ごめんなさい……」

 ――泣き声にも近い、か細い声だった。
 ユウは頭を垂らしながら打ちひしがれている。

「僕のせいで世界がこんなことに――」
「ユウ、」
「ユウって、ネネの弟さん?」
「おぉー!ネネさんの!」

 ゼンジロウが興奮気味に言うところを、アカリがすかさず止める。うん、上手い。
 ツッコミ、ボケはこの二人がいないと決まらないと遥瑠は確信した。



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