「仲間の在り方の話なぞ、おれたちに意味があるか。
なァ。嬢ちゃん。
おれたちは“デスジェネラル”なんだよ」

 たったその一言で。
 遥瑠の言葉も、想いも、吹き飛ばされた。

「今さら言われたとこで――
なにもかもが遅ェんだ」
「っ……!!」

 じわじわと黒い感情が染み渡り、遥瑠を汚していく。
 なんで、なんで通じないんだ。遅いなんて――

「そんなことない!!」
「ん?」
「タイキ、」

 タイキもまた、ふらつく体で遥瑠の隣に歩み出る。
 その瞳には確固たる意志を映しながら。

「たしかに解りあうには、もっと時間が必要だろうな。
だけど遅いなんてことはない!
――少なくとも、この世界を俺たちが救うまでは、忘れないでほしいよ。
お前たちはこんなところまで来ても誰かに想われてるってこと!
誰かに想われてるってのはさ……結構、優しい気持ちになれるんだぜ」

 あるいは勇気を。あるいは涙を。あるいは愛を。
 繋がりとは――心を与えてくれることだ。

この、わからず屋ー!!

 遥瑠は精一杯の大声音で言った。
 静かな世界にめちゃくちゃ響く声は凄まじく、またそんな大声音を出せるとは思わなかったタイキたちもデスジェネラルも、大きく目を見開く。

「そーいう“諦める”っていう姿勢を直したいって言ってるの!諦めたらなにもかも終わりじゃない!
どんな小さな可能性だって、一という数字があるのなら、絶対に諦めたりしない!!
あたしは」

 握りしめるクロスローダーが、熱く光を灯す。

「あたしたちは、負けないんだからー!!」

 大いなる慈悲の光が、手のひらから水の如く溢れ出る。
 陽にも似た心地よさと闇にも似た厳格さ。
 ――どちらも兼ね揃えた光は、今までにない“強さ”と“予感”を感じさせる。
 これは、この胸に膨らむものは

「カイ」
「ああ、感じるよ。お前の想いが」

 カイザーレオモンに纏う金色の光。女神の光によく似ているが、少し違う。
 知っている。この光は、きっと。

「……戦ってくれるよね、カイザーレオモン!」
「二度は言わないぞ。
ミチのためならこの力、惜しみなく振るうってな!」

 クロスローダーに浮かぶ文字は未来へのF。新たな可能性(みらい)を拓く――futuroの意!
 舞い踊れ、闇の戦士よ。

カイザーレオモン、超進化!!
――ライヒモン!!

 獅子の鎧を身に纏う“人型”の戦士。
 世界にたゆたい、安らぎをもたらす――まろい闇はどこまでも優しい。
 ライヒモン。カイザーレオモンの新たな可能性であり、静謐(せいひつ)をあまねく届ける闇の守護帝。

「超進化、した」
「ここは心の世界だ。その願いや祈りが強いほど、象とするんだろう。
ミチ、お前の祈りは力だ。力は祈りだ。
――どうか祈り続けてくれ。
俺は、負けない」

 真摯な言葉は溶けるように心へ伝う。
 今のカイザーレオモンなら――ライヒモンなら、絶対負けない。

「付け焼き刃程度の超進化!
それで我らを負かすだと?!」
「負かすんじゃない。
届けるんだ。――お前たちは、想われているのだと」

 そうか、そうだった。
 ライヒモンはいつになっても、届ける者なのだ。
 今は亡き友のときも、同じ。

「戯れ言を!
ハイドロプレッシャー!」
「ナイトレイド!」
「オクタグラビティ!」
シュヴァルツ・レールザッツ!!

 一閃。
 三人のデスジェネラルたちの技を、槍で一払いした。

「ぬぅ?!」
「一払いで攻撃を防いだだと」
「言ったはずだ。
俺は負けないとな」

 赤の眼は――デスジェネラルを捉えて離さなかった。

(……なかま……)

 ――仲間を大事にするお前が、仲間を大事にしない奴の下で戦っていいのか!
 ――我々は仲間ではない。――敵でないだけだ
 ――オレーグモン!俺たちはお前を想う心を信じてる!
 ――周りのひとたちってね、こう呼ぶの。
 “仲間”って

(……オレにとっての、仲間はよぅ)
「ブラッディストリームグレイド!」

 ネオヴァンデモンの鉤爪が、鈍い輝きを放ちながらライヒモンを狙う!

「――ッうぉああぁぁぁぁ!!」

 ――雄叫びと共に、斧が巨大吸血鬼の動きを止めた。

『オレーグモン!』
「なにっ?!
――貴様、裏切る気か?!」
「へっ、当ったり前だ!
オレは仲間を信じる奴が好きなんだよ!」

 遥瑠たちの傍らにオレーグモンは降り立つ。
 迷いのない清々しい顔。黄金の海で見た豪快さを、彼は取り戻せたみたいだ。



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