「やめろX7S!!」
「一番強い力ぶつけりゃァ相手の力量がわかるっつったのはタイキだぜ?!」

 X7Sは次々と必殺技を放つ。もちろん手加減などなく、ありったけの力を出してである。
 勝ち誇った笑みをたたえながら、怒濤の連続攻撃は止まる。――直後、X7Sは目を見開いた。
 遥瑠たちも息をのみ、体を強張せる。
 デスジェネラルさえ圧したX7Sの技を、バグラモンはすべて“防いだ”のだ!
 バグラモンは白く巨大な右手で、X7Sの頭をわし掴みにした。

「満足したかね……?
まだ話の途中でね」

 右手に力を込め、容易く放り投げられる。
 たったそれだけ。
 それだけで――X7Sは散った。

「私はただ素晴らしい敵と認めた君たちに晴れの日を見せてやりたいだけなのだがね。
究極の破壊の日を」
「――D5――」
「ほう。知っていてくれたかね。
ならば話は早い」

 すると、バグラモンの胸に光る怪しい光に気づく。暗黒水晶(ダークストーン)だ。
 彼はデスジェネラルさえもよみがえらせる暗黒水晶を、よりにもよって自らの体内に取り込んでしまったらしい。

「D5――五つのDの総称だよ。
ディメンジョンデリート・アンド・デッドリーディストラクションデー。
すなわち暗黒の力がすべての次元を破壊し、融合させる日だ。
人間さえも滅び、全時空が我が領土となる。
あの陰の世界さえも」

 Dimension・Delete・Deadly・Destruction・Day。
 すべてを破壊する、暗黒の日。

「諸君もその立派な協力者だ。
デスジェネラル七人が倒されるのも想定内。
――むしろ彼ら自身の無念も負のエネルギーとなり、暗黒水晶をより早く完成させる効力を生んだ」
「そんなっ……」

 バグラモンはデスジェネラルの心さえ、暗黒水晶の糧にしていたのだ。
 生きる者すべて――リリスモンやブラストモン、タクティモンでさえも。
 タイキははっとした。彼の右腕には見覚えがある。……ソードゾーンでコードクラウンを奪い、強制送還をした腕だ。
 タイキの様子に気づいた遥瑠は、掠れぬよう、必死に声を絞り上げる。

「――見て。あの右目。
あの右目はインビジブルスネークアイズといって、デジタルワールドすべてを見渡すことができる。だけど時空を渡って陰の世界も見れたのね。
負のエネルギーがオグドモンに影響したように……そのエネルギーのおかげでオグドモンの存在を知ることも、世界も見ることができた。
バグラモンには元来、空間に何らかの影響を及ぼす力がある。
……つまり、空間を越えるなんてとんでもない力が更に強くなれば……!」
「オグドモン。あれさえいれば、負のエネルギーはもっと早くつむことができた。
罪に溺れ罪人を救う。その身にどれほどの負の感情を浴びたことか。
しかし今はもう必要ない。今の私には――そう。こういうことができる」

 右腕は雲を貫き、天を貫き――“時空”を、貫く。

「――おお、届く!掴めるぞ、人間界!
見たまえ!反逆者の人間諸君。
今日がD5その日。諸君らの故郷の終焉の日だ」
「ダメよ!止めなきゃ!」

 ネネの声に遥瑠とキリハは頷く!

『リロード!』
「サイバードラモンッ!」
「アクィラモン!」

 カイザーレオモンたちは一斉に突っ込む――最中、バグラモンは悠然と視線を傾く。

「不粋はよしてもらえるかね」

 ふっと放たれた息は、途端に真空波と成長(かわ)り、カイザーレオモンたちを吹っ飛ばす。
 さらに大地は亀裂を刻んで、遥瑠とタイキ――そしてテイルモン、メルヴァモン、ナイトモン、カイザーレオモンを底へ堕とした。

「タイキ!」
「ミチ!」
「いきなりエースが消えたか。
――フフハハハハハハハ!」

 哄笑がキリハたちの心に浸透する。
 バグラモンは小さく鼻を鳴らし、右腕をさらに巡らせる。
 スプーンでかき混ぜるような軽い感覚で、地球すべてを石化しているのだ。
 野花も行き交う車や人も、すべてを。
 バグラモンの右腕は最後に日本へ向かい――タクティモンが敗れた東雲で降り立つ。
 遺った刀、蛇鉄封神丸がタクティモンの意思を引き継ぎ、バグラモンを誘ったのだ。




 地上は遠い。
 ひび割れた大地に吸い込まれた遥瑠たちは、メルヴァモンに抱き抱えられて無事着地した。
 てっきり岩壁かと思っていたが、廊下のようになっている。……部屋。しかも、地下室。

「メルヴァモン、ありがとう」
「お前たちに何かあったら、ベルゼブモンに合わせる顔がない」
「……すっかりデキてますなあ」
「うるさいぞミチ!」
「はいはい、ストップ!
……ここからじゃあ上がれないわね」
「アクィラモンもいないし、上へ登れる場所を探した方がいいだろう」
「ああ。
――頼む、持ちこたえてくれよ。キリハ、ネネ」



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