「いくぞベルゼブモン!」
「おうッ!」
ドゥラフ・ケーニッヒ!!
デス・ザ・キャノン!!

 黒い風は獅子の咆哮を上げ、銃口から放った球体と合体すると、稲妻を纏い魔獣を飲み込む!
 倒せずともこの合体技ならば――
 カイザーレオモンたちの期待は、一筋の光に貫かれたベルゼブモンによって、打ち砕かれた。

「ふふふ、やっと当たったね」
『ベルゼブモン!!』
「しっかりするッキュ!」
「ちょこまかと動きやがって。
今度こそおまえの命、消し去ってやるよ。
アタシはその為に蘇ってきたんだからねェ!」

 稲妻を纏った風でも、切り刻むことはおろか傷一つつけられなかった。
 魔獣はカイザーレオモンたちをわし掴みにし、握り潰す。

「覚悟しな。
すべてを無にしてやる……!!」
「うぐっぐあぁ!」
「負けるか……お前のような奴に、俺たちが!」

 カイザーレオモンの叫びは、

「負ぁけるかぁぁぁぁーーー!!」

 タイキの咆哮にも似た叫びと共に、空へ高く響く。

「――データ転送、終了」

 ワイズモンが静かに告げた直後、光は消え、タイキは倒れる。
 すかさずネネと遥瑠が抱き止め、全員が必死にタイキの名を呼んだ。

「た、タイキ!」
「しっかりして、タイキくん!」
「タイキ!」

 ――不意に、頭上から光が漏れる。
 この光の先は、もしや。

「ゲートが」
「開いた……」
「成功したんだ!」

 空を仰ぐと、黒のデジモンが飛んでいくのが見えた。

「ユウ!」
「スカルナイトモン……!」

 スカルナイトモンはゲートが開くのを待っていたらしい。
 この状態ではユウを追いかけることができない。

「ゲートが閉じる!時間がないぞ!」
「――わかってる!
X7S、攻撃よ!」
「リリスモンを撃破して、ここから脱出だ!」
「絶対に出なきゃ!」

 気絶するタイキを横にし、三人のジェネラルはクロスローダーを構えた!

「いくぜェ!
クロスバーニングロッカー!」

 垂直に降りていく姿は流星の如く。

「タイキ、やったな!」
「成功したんだ……!」

 ベルゼブモンは右腕の大砲を外し、バルカン砲となった銃口を向ける。

「貴様の悪事もこれで終わりだ!」

 緑弾は魔獣の顔面に直撃し、隙間ができる。
 その瞬間を逃さず、カイザーレオモンたちは魔手から逃げた。

「受けてみろォォ!!」

 全員の熱い魂を――

「おのれ、そんな力でアタシの憎しみを――消せるものかァァァァァァァァ!!

 ――魔獣は、受けきれなかった。
 大爆発が起こり、さすがの魔獣も消えただろう。
 X7Sは親指を立て、出口へ飛翔する。カイザーレオモンたちも後を追うように飛ぶが――
 白い光が煙のように揺らめく。

「おぉぉ……ぬぉぉおぉ……おぉぉおおぉぉん……」
「まだ消えないのか、このおれへの憎しみ!」

 魔獣もといリリスモンの眼は、確とベルゼブモンを捉えていた。
 ベルゼブモンは抱えていたメルヴァモンとキュートモンを離し、一人立ち止まる。

「なに、」
「先に行っててくれ。
おれは奴への決着をつける」
「何を言っている?!
一緒に戻って傷を治すんだ!
――おい、カイザーレオモン、何をしているんだ!わたしらじゃなくベルゼブモンを――」
「キュゥ!」

 言いかけた途中、カイザーレオモンが彼女らを背に乗せ翼を広げる。
 決して、ベルゼブモンの顔を見ないように、背を向けながら。

「……カイ」
「行けよ、ベルゼブモン。もうわかってるのだから。
お前も、自分自身でわかってるんだろ。
お前の体はもう、治らねぇってこと」
「どういうことなんだ……」
「それでボクの力が効かなかったッキュ……?」



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