「作戦はこうだ。 これが敵の城壁。そこから俺たちのいる場所から二つの谷が通じている。 まずはネネの軍」 指で弾かれた木の実は、からころと音をたてて転がる。 峡谷を描いた地面を見下ろし、キリハは作戦を続けた。 「空から城壁へ攻撃。すると奴らは空を翔べるヒポグリフォモンを送り込んでくる」 カツン。 木の実と石ころがぶつかる。 「次にタイキとミチの軍。 素早く動ける者を右の谷へ。 奴らは動きの速いケルベロモンを送り込んでくる。 そしてパワーのある者を左の谷へ――。 奴らは力の強いウェンディモンを送り出してくる」 「ん?キリハ、オメーの軍は?」 「高見の見物なんて言わないでしょうね」 シャウトモンとテイルモンがジト目で睨むように視線を注ぐ。 「そして俺の軍。 敵陣に残るはデスジェネラル、グラビモンのみ。そこに俺が」 「なんでえ、美味しいとこ全部お前ってことかよ?!」 「それにバラバラに戦う私たちは、長くは持ちこたえられないわ」 「十分」 石ころを踏みつけた。 砂利と石ころは踏みにじられ、キリハはクロスローダーを構える。 「十分持ちこたえるだけでいい。 十分敵を引き付けるだけで――その間に、俺が討つ」 「……もし持ちこたえられなかった場合はどうする」と、ドルルモン。 「そうよ。かなり危険な作戦よ、私たちみんなが!」と、ネネ。 「くだらんな。 戦う前から負けることを考えてどうする。 弱さは悪。石にかじりついても勝て! 勝てない奴はクズだ」 「なんだとぉ?!」 「……キリハ、かなり焦ってるように、あたしには見えるんだけど。 何でこうまでして早くする必要があるの?」 「ゴールは近い。 真の目的の為に戦う」 「お前の――真の目的――?」 「そうだ。俺がここで最強であることを証明する為の」 「最強……? ――それってバグラ軍を倒す、そういう意味だよな」 タイキの問いにキリハは目を伏せる。 「そういう風にとってもらっても構わない。 だが覚えておけ。俺が最強であることを証明する為に必要というのなら――お前とて容赦はしない!!」 本気だった。 その眼も、声音も。 「……いいよ、キリハ。 それで」 「いいって、タイキ――」 「俺はキリハを信じる。あいつはそんなことしない。 キリハを仲間と信じて、俺は共に戦う」 どこまでも広く、まっすぐなタイキにキリハは鼻を鳴らして「どうでもいい」と吐き捨てた。 今の彼には、仲間も、ライバルも見えていないように感じた。 「戦おうキリハ。お前の作戦で。 バグラ軍を、第六のデスジェネラルを倒す為に。 ――共に戦おう!」 タイキは高らかにクロスローダーを掲げた。 頭上にはクロスハート、ブルーフレア、スターシリウスが描かれた軍旗がはためく。 戦いの始まりであった。 |